@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『バハールの涙』

「女!命!自由!」

 

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『バハールの涙』(英語:Girls Of The Sun)(フランス語:Les Filles Du Soleil)

 

 クルド人の女性で弁護士のバハール(ゴルシフテ・ファラハニ)は、イラククルド人自治区内にある故郷の町で夫と息子と共に幸せに暮らしていたが、ある日、町がIS(イスラミックステート)の襲撃を受け、夫を始め男性が皆殺しにされ、息子を戦闘要員として育成するために連れ去られ、自身もISの幹部に性奴隷として売り飛ばされてしまう。
 やがて命からがら逃げ出したバハールは息子を必ず取り戻すことを決意、同じ被害に遭った女性を集めて女性だけの戦闘部隊「太陽の女たち」を結成、ISとの闘いに身を投じていく。やがて彼女たちは、「女に殺された者は天国に行けない」と信じるISの戦闘員たちに恐れられる存在となっていく。
 ある日、バハールは片眼のフランス人女性と出逢う。彼女はフランス人の女性ジャーナリスト・マチルド(エマニュエル・ベルコ)。彼女も戦場で夫を亡くし、自身も片眼を失っていた。また、愛娘を本国に残して、PTSDに苛まれながらも取材を続けていた。マチルドは早速バハールたちに興味を持ち、命がけで密着取材を行う。似たような境遇の2人はやがて、固い友情で結ばれていく。 (Wikipediaより)

 

 

 とにかくすごい映画だった。実際にあった出来事をモデルにしているだけあって、かなりリアリティがある。しかもつい先日のノーベル平和賞を受賞したナディアさんもこの映画のバハールと同じ境遇を経験していたし、とてもタイムリーな作品だ。

 

 この映画が良くできているところは、バハールを常にマチルドの目線で観ることになっているところだ。映画のラストにマチルドが言うセリフがまさに私の感想を代弁しているようであった。「こんなことみたのは初めてだ」というマチルドのセリフにすべてが詰まっている。女性戦闘部隊は第1次世界大戦からあったし、ロシアには女性部隊があった。(映画『ロシアン・スナイパー』など)。被害者でいるより戦おうとする姿は『マッドマックス怒りのデス・ロード』に通じる部分があるが、観た後の感想はまさに『ロシアン・スナイパー』と同じ。善悪でバハールを判断したりできないし、「銃を持って戦う必要なんてないよ」「暴力以外で解決できないのだろうか」なんて思っていても本人たちを目の前に言えない。そして彼女たちの戦う姿に迷いなんてない。そこがとても複雑な気分になる。説明も難しい。

 

 しかしこれだけは言える、「女性!命!自由!」と歌う彼女たちの姿には感動した。彼女たちに真の自由が来てほしいし、我々も連帯しなければいけない。バハールたちが戦っているのは何もISだけでなく、同じ部隊の家父長制とも戦っているのだ。もし戦いが終わっても、彼女たちに訪れる現実は厳しいだろうし、性奴隷として扱われた女性たちを解放しても、彼女たちが無事に生活に戻れるのには時間がかかる。第2次世界大戦、銃を持った女性たちが、仕方なく性奴隷となった女性たちが、戦後っどのような差別を受け平穏な生活を取り戻すのに困難であったかを知っている我々は、同じことを彼女たちに起こしてはいけないと思う。そして少年兵として育てられた少年たちにも支援を忘れてはいけない。この映画は私たちにとても複雑で残酷な現実を教えてくれるのだ。

 

 映画の批評ポイントとして。バハールが戦う理由が母性からくるものであるため母性神話をより強固にしているように見えるが、逆に言えばそれこそこの映画で女性たちが銃を持った理由だ。元来女性は月にたとえられてきたが、バハールたちは「太陽の娘たち」と名乗るのだ。これがどれだけのことを意味しているのか私にはわかる。そのため邦題である『バハールの涙』はミス・マッチである。つけた人は勉強不足である。

 

 そして今作を監督&脚本したのはエヴァ・ウッソンという女性監督。その他にも製作のディダール・ドメリ、編集のエミリー・オルシニ、音楽のモーガン・キビーなど主要スタッフが女性である。キャストも含めスタッフも女性という映画で、ぜひ多くの人に観ていただきたい。