『ソフト/クワイエット』(Soft & Quiet) [2022年アメリカ]
郊外の幼稚園に勤めるエミリーは、「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義グループを結成する。教会の談話室で開かれた初会合には、多文化主義や多様性を重んじる現代の風潮に不満を抱える6人の女性が集まる。日頃の鬱憤や過激な思想を共有して盛りあがった彼女たちは2次会のためエミリーの家へ向かうが、その途中に立ち寄った食料品店でアジア系の姉妹と口論になってしまう。腹を立てたエミリーたちは、悪戯半分で姉妹の家を荒らしに行くが……。
監督はベス・デ・アラウージョ。
監督のベス・デ・アラウージョはラテン&アジア系女性で、おそらく彼女の実体験がもとになっているとしか思えないのだが、実際にあった事件がモデルらしいです。というか監督の情報を先に仕入れて良かった。もしこの作品が男性か白人かの監督だったら、たぶん私はこの作品が好きじゃなかっただろうから。それに男性だったら製作されなかっただろうし。本当にハード&ラウドな作品だと思う。
全編ワンカットで撮影されているのが売りだが(ワンカットのように見せているだけだと思う。物理的に映画をワンカットで撮るのは難しい)、編集も凄いと思う。しかしワンカットで撮影するのにこだわりすぎて、全編に渡って手ブレしていて画面酔いする。ただでさえ内容が内容だけに、余計気持ち悪くなるという。でもこれは狙った気持ち悪さだと思う。私はもちろん気持ち悪くなったので、まんまと監督の術中にハマった訳だ。観客の見本だ。
ホワイトフェミニズムどころかフェミニズムの存在すら否定する彼女たちだけど、彼女たちの言う"フェミニズム"も"多文化主義"も間違った概念で理解しており、まさに陰謀論を信じている感じだ。というか概念なんて理解したいとすら思っていないだろう。理解するくらいなら陰謀論を信じたほうがマシというわけだ(こういう白人、アメリカにはいるんだよな)。また彼女たちは最後まで自分のことしか考えていなかった。アジア系女性2人を襲った後も、ようやく罪の意識が芽生えたのも自分たちが警察に捕まるかもしれない不安からで、別に目の前で死んでいるアジア系女性を気の毒に思ったからとかではない。
と書いたが、製作側もどうすればよいのか途中から分からなくなっていったのかが何となく伝わってきた感も否めない。まあ脚本というか、観客を深いさせるのが目的の映画なら目的自体は達成されている作品ではある。