真実は小説より残酷なり
『天才作家の妻ー40年目の真実ー』
この映画を観る前に我々は壮大なネタバレもしている。なぜならこの映画のラストは結局ジョーンとジョセフのゴーストライターという関係を公に明かされることなく映画は終わるが、そもそもこれが映画になっている時点でジョセフがゴーストライターであることは周知の事実であることが分かるからである。(そのため映画でよくあるモデルになった人のその後みたいな紹介はなかった)
この映画はノーベル賞授賞式に向かう現在の夫婦と出会って結婚しゴーストライターをやるきかっけになる昔の夫婦を同時進行で描いている。とにかく観ていてつらいのは、昔のジョセフを取り巻く環境である。女性作家と分かると、全く評価してもらえず(というか本を読んですらもらえてない)、特にジョセフが尊敬する女性作家さんからきつい現実を突きつけられるシーンなんて辛すぎる。そして才能があるにもかかわらずジョセフがジョーンの執筆を手伝うシーンなんて...さらに辛いのがジョーンの逐一の言動である。自然に妻であるジョセフや息子を見下したりするし、自分はカメラマンの女性(あのカメラマンはプロとして失格ではないか?)と二人だけで食事し関係まで持とうとするし(そして過去に何度も浮気してたっぽい)、そのくせ妻のジョセフが一人で出かけると激怒するし(映画冒頭のセックスシーンを暗示したテッシュが出てきたときなんてクソ腹立った)、とにかく根拠のない自信で満ち溢れている。(それがジョーンの強み何だろうし、逆に言えば人生で事あるごとに潰されることのなかったのが男性ゆえの自信なのだろう) ラストの妻に裏切られるシーンなんて観ていて最高だったが、まさかジョーンが亡くなるとは思わなかった、
日本ではノーベル賞を誰かが(全員男だ)受賞するたびに、それを支えた妻話に感動するが、ぜひそういう人は今作を観てほしいと思う。
またジョセフを演じたグレン・クローズはオスカー最有力と言われていたが、獲得できなかった。(おそらく今作があまりヒットしなかったし知名度が低かったからではないかと言われている) また違う作品で狙ってほしいと思う。