@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』

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ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(Darkest Hour)

 

今作ではチャーチルの首相当選からダンケルクにおける撤退に至る過程を描いている。まず一番の感想として出てくるのが、史実を描いているのに飽きさせず作ってあり、作り手の巧みさを感じる。しかしそれが返って恐ろしくも感じ、映画が終わった後に襲ってくる感想が「戦争賛美じゃん」である。特に地下鉄に乗り、市民(アフリカ系の男性や赤ん坊連れの女性そして幼い女の子)から「Never」意見を聞いて、戦いを決意するシーンなんてたとえ脚色としてもかなり不快になる。「ああやって市民の声は政治に利用されるんだ、気を付けよう」と教訓になったくらいだ。私は断固戦争反対派なのでドイツと和平を望んだ外務大臣エドワードウッドの方がよっぽど「世界を救った男」に見えてしまった。(もちろん彼も政治家としての野心だったと思うし、それでナチスがどう対応するのかは分からない)しかし「これ以上若者を死なすわけにはいかない」という発言は本心だと思う。彼のほうが世界を救った男に見えるし。

 

またチャーチル本人がそうだったんだろうけど終始癇癪を起し周りに当たり散らすので見ていて辛かった。特に秘書のリリージェイムズに対して。さらにチャーチルの癇癪をなだめたり常に支えるのは女性たちで、チャーチルに仕事面での知識や意思決定を与えるのは男性たちだったのでその辺は保守的な映画だった。それなのにポスターには二人が描かれていたりするので、その辺はなんなんだと思うくらいである。

 

また本作ではチャーチルを演じる上でゲイリー・オールドマンの特殊メイクを担当した辻さんはアカデミー賞の特殊メイクアップ賞を受賞した。そのかいあって特殊メイクはすごい。しかし元も子もないことを言うが、これは果たしてすごいことなんだろうか。私はどうもそこまで似せる必要があったのかと思ってしまうのだ。素人意見で申し訳ないが、逆にあそこまでバッチリメイクだと違和感を感じてしまわないか?それよりもジョージ6世を演じたベン・メンデルソーンのほうがすごいと感じてしまうのだが。少ない登場時間でも確実に記憶に残るし。(ああごめんなさい、本当に)でもメイクアップでここまで変貌を遂げることができることを証明したのはいいことだと思う。私はよく「この役を演じるために何キロ減量しましたとか」があまり好きではなく、こういうメイクで痩せるメイクが主流になれば製作人も役者本人に過度な減量はさせなくて済むのだから。体は資本である前に、大切にしてほしいし。(話がそれた)

 

また今作はチャーチルの政治主導を美化していることで、彼が植民地で大量の餓死者を出したことが改めて批判されています。当然です。そもそも私がこの映画をそこまで評価できないのがそこなんですよ。チャーチルの好戦的な性格を批判し戦争に反対したあの外務大臣ですら植民地大臣ですからね。政治家ってとても美化できる存在じゃないのです。歴史は映画よりずっと残酷です。こういう批判がなされ、オスカーでもたくさんの賞にノミネートされ、受賞した今、この作品に関わった人々は次はぜひ植民地時代のインドを舞台に映画を作ってほしいです。映画で起きたことは、映画で償うのが一番です。映画にはそれくらいの力があるのですから。