@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ビガイルド 欲望のめざめ』

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『ビガイルド 欲望のめざめ』(The Beguiled)

 

ソフィア・コッポラ監督作品を初めて劇場で観てきた。まず始めに私は彼女の作品に少しだが苦手意識がある。『ロスト・イン・トランスレーション』が恐ろしく好きになれず(むしろレイシズムを感じたし)、Twitterでフォロイーさんに教えていただいた(ありがとうございます)、『SOMEWHERE』も響かなかったからだ。金持ちの満たされない生活を描いていて、まさに"お姫様の世界"で私には全く受け付けないのだ。(映画界では受けるんだろうけど...)

 

しかし『ビガイルド 欲望のめざめ』を観て、初めてソフィア・コッポラ監督の作品を好きになった。なぜなら今作は私たちの身近な世界を描いているからだ、舞台は南北戦争時のアメリカなのに。

 

今作の原作にあたる 『白い肌の異常な夜』は観たことがない。そのため比べて感想を書くことはできない。ドン・シーゲル監督版は脱走兵を物語の中心に添えているらしいが、ソフィア・コッポラ監督版は彼を世話する女性たちの経験を物語の中心に添えている。

 

南北戦争下を舞台にした映画としてはかなり小さな世界しか描いていないが、彼女たちが暮らす寄宿学園は聖域でもあり外の広い世界から隔絶された牢獄でもある。寄宿学校には ニコール・キッドマンが校長、 キルスティン・ダンストが教員、エル・ファニングを始めとした生徒たちが暮らしている。そんな彼女たちのもとにマクバニー(コリン・ファレル)がやって来る。最初は命を助けてもらった恩と、寄宿学園でこれからも過ごしたいという気持ちから彼女たちに好意的に接する。しかし学園内の事故をきっかけに足を切断してからは彼のミソジニーが露呈し始める。この映画で目覚めたの彼女たちの欲望ではなく、彼のミソジニーだった。聖域でもあり牢獄でもある学園では、彼女たちは逃げ出すことはできない。あくまで彼の暴言や暴力に従うしかない。まさにDVだ。どうしようもない環境から助けを呼ぶことができない。同じ南部の兵を頼ることはできるが、彼ら(男)もまた彼女たちを抑圧するものだ。(現に味方である南部の兵士たちに食べ物を奪われることを警戒していた)そんな日々に嫌気がさして、とうとう彼女たちはマクバニー殺害計画を企てる。(ドレスアップして)毎日しっかり食事するので「本当に戦争中なのか?」という疑問は確かに沸くし、それが監督への批判に繋がると思う。しかしその食事こそこの映画最大のオチ(マクバニーの殺害)として使われていた。随所に差し込まれる食事のシーンは必要だったと納得した。

 

マクバニーのように最初はいかにも優しいのに何かの弾みでミソジニーが現れる男、いるよね。むしろあからさまに女を見下す奴よりこういう内に秘めたミソジニーが露呈する人の方が多い。まさに世の中にはびこるミソジニーソフィア・コッポラ監督はこれでもかというくらい暴き出してくれた。

 

しかし今作では批判もある。なぜなら原作に登場する黒人女性のメイドが出てこず、代わりに白人の女性が演じていることが論争に発展した。