@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『パリ・ブレスト~夢をかなえたスイーツ~』

 

『パリ・ブレスト~夢をかなえたスイーツ~』 (AA la belle etoile) [2023年フランス]

 

母親に育児放棄され、過酷な環境で暮らす少年ヤジッド。そんな彼にとって唯一の楽しみは、里親の家で団らんしながら食べる手作りスイーツで、いつしか自分も最高のパティシエになることを夢見るように。やがて児童養護施設で暮らし始めたヤジッドは、パリの高級レストランに見習いとして雇ってもらうチャンスを自らつかみ取る。田舎町エペルネから180キロ離れたパリへ通い、時には野宿もしながら必死に学び続けるヤジッド。偉大なパティシエたちに従事し、厳しくも愛のある先輩や心を許せる仲間に囲まれて充実した日々を送るが、嫉妬した同僚の策略によって仕事を失ってしまう。監督はセバスチャン・テュラール。出演はリアド・ベライシュ(ヤジッド)ほか。

 

 ヤジッドの職場の先輩として、日本人のサトミ(源利華)が出てくる。シェフとして厳しくもあるが、同じ移民のルーツがあるヤジッドに何かと世話を焼いてくれる、奥行きのある人物として描かれている。正直言うと、フランス映画にアジア系女性のまともな描写を期待していなかったので、驚いた。

 

 ヤジッドの実親が政府に頼れず人生が立ち行かなくなる移民女性として、どうしても息子に依存し里親に当たり散らしてしまうあたり非常にリアルだ。ただ本作は実親のケアもしっかり描いている。特に里親が実親をケアしている姿とかの支援をしっかり描いていると思う(同じくフランス映画の『1640日の家族』と類似している。2つとも母子映画だと思う。) フランスの子ども福祉は家族の形にこだわるんだなと。

 

 ヤジッドが実親に依存されて、何度もそれを突っぱねて、どこかで距離を取れて、何かしらの愛情を返せる(本作では手作りブレスト)のは、しっかり里親や先生たちに愛されて支えられた経験があるからだ。知らずにそれがしっかりヤジッドの力になっている(あんなに何度も職場を変えてもそこで頑張れるのはその力があるかららだ)。ケアがエンパワーメントに繋がることを非常に真摯に描いている作品だ。

 

 ラストの氷像でワシじゃなくて翼の生えた女性象を作ったのは非常に意味のあるシーンで、男性の象徴であるワシを否定している。そもそもヤジッドは全然マッチョじゃないというか。友達が「女は」みたいな話をすると意図的に話をそらしたりするし。ああいう会話を嘘でもしたくない人なのだろう(エンドロールでご本人の写真が出てきましたが、非常に優しそうな人だった)。ヤジッドは誰かと付き合いたいみたいなこともなさそうで、そこが非常に観やすいのも私が本作で感動した理由かもしれない。

 

 あとこういう移民とかの映画の主人公ってほとんど男性だし、行く先が良い悪い関係なく、成功しているパターンが多い。男性は家族の世話とか押し付けられないからだろうな。