午前十時の映画祭14『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』 (Indiana Jones and the Temple of Doom) [1984年アメリカ]
前作より1年前の1935年。上海のナイトクラブでマフィアとトラブルになったインディは、クラブの歌姫ウィリーと現地の少年ショーティを連れて逃亡するが、飛行機が墜落しインドの山奥に不時着してしまう。寂れた村に辿り着いた彼らは、この村の子どもたちが邪教集団にさらわれ、村の秘宝「サンカラストーン」も奪われたことを知る。奪還を依頼されたインディたちは、邪教集団の根城であるパンコット宮殿へと向かう。監督はスティーブン・スピルバーグ。出演はハリソン・フォード(インディアナ・ジョーンズ)、ケイト・キャプショー(ウィリー)、キー・フォィ・クァン(ショート)ほか。
219席ある会場に私を含め観客が6人ほど...初日でだよ...やっぱりTOHOが良くないんじゃないの。スティーブン・スピルバーグは本作があまり好きじゃないそうですが、私は大好きですよ。
2作目だけど時系列としては『レイダース/失われたアーク≪聖櫃≫』より1年ほど前らしい。冒頭ですでにヌルハチ盗みをしていて、それで金を稼いでいるようで、「博物館に寄贈すべき」みたいなキャラクターアークどこにいったんだと思う。一方であのヌルハチって満州王国の初代皇帝らしいし、あれは日本軍から盗んできたんだろうね。その過程でショートと出会ったんだと考えると感慨深いものがあるな。
『レイダース/失われたアーク≪聖櫃≫』と『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』と違ってストーリーが独立しており、「聖なる務め」(白人の救世主)としてのインディ・ジョーンズとして、かなり娯楽に寄った作品になっていてかなり面白い。『レイダース/失われたアーク≪聖櫃≫』よりエキゾチックで、大変罪な映画だけど面白い。宮殿の食事シーンなんて面白いけど酷いよね。ケイト・キャプショーとキー・フォイ・クァンのコメディリリーフな演技は最高だ。ただタギー教の儀式や支配を悪く描いて、ラストの子どもの解放シーンを感動にしているのを見てると、本作は本当に救世主の話なんだろう。
それより『レイダース/失われたアーク≪聖櫃≫』のマリオンより女性の描き方が後退したなと感じる一方で、ケイト・キャプショー演じるウィリーが本作の笑える部分の大部分を担っているので、どう考えても彼女の功績が大きい。ただハードボイルドでかっこいいインディと圧倒的高感度のショートと比べると足手まといに見えて少し可哀そうな役だ。ケイト・キャプショー、確かスピルバーグ監督のパートナーですよね。
タギーの儀式の気味悪さは大画面で観るとより感じる。あの煽る演出って今もインドの大作映画でよく見るけど、ああいう演出ってドイツのサイレント映画から影響を受けているのかな。少なくともスピルバーグ監督は『メトロポリス』みたいなサイレント映画を作ろうとしていたのは伝わる。ぜひ本作もサイレントで観直して欲しい。儀式のシーンなんてセリフ無しで観てもしっかり怖いと思う、それくらい巧みな演出。プロパガンダとか絶対作っちゃダメだよ。
インディが闇落ちした時の気味悪さも相変わらずで、子どもの時このシーンで挫折して観るのをやめたっけな。それもハリソン・フォードの演技が上手いからだ。それにトロッコのシーンも面白いし、わざわざトロッコを作るとか情熱が凄い。あの流れも完璧で、トロッコを足で止める、足が熱くなって「水」って言う、そしたら大量の水が来る、っていう一連の流れが巧みすぎる。
そう言えば『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』後の本作なので、やはり去年公開されたインディ・ジョーンズの新作にショート・ランドが出てこなかったの、だいぶ惜しい。今すぐ6作目を作ってショートにインディの帽子を継承させるべきだ。