@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『オオカミの家』

 

『オオカミの家』 (La Casa Lobo) [2018年チリ]

 

ピノチェト軍事政権下のチリに実在したコミューン「コロニア・ディグニダ」に着想を得て制作したストップモーションアニメ。美しい山に囲まれたチリ南部で、「助けあって幸せに」をモットーに掲げて暮らすドイツ人集落。動物が大好きな少女マリアは、ブタを逃してしまったために厳しい罰を受け、耐えきれず集落から脱走する。森の中の一軒家に逃げ込んだ彼女は、そこで出会った2匹の子ブタにペドロとアナと名づけて世話をするが、やがて森の奥からマリアを探すオオカミの声が聞こえてくる。マリアがおびえていると子ブタは恐ろしい姿に変わり、家は悪夢のような世界と化す。監督はクリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャ。

 

 実際に軍事政権下のチリに実在したコミューンから着想を得た話だそうで、本編の前後に流れるコミューンの宣伝みたいなナレーションはプロパガンダとしての宣伝そのものだったのだろう。しかし本編だけを観る限りだと軍事政権下への言及はなく、この映画だけを観たら本当にプロパガンダと思ってしまう作りになっている。ここはけっこう危ないというか、無批判に観ていることには問題があるかも。

 

 『ミッドサマー』のアリア・スター監督が本作を絶賛したみたいな宣伝が日本ではけっこうされていたが、確かにこの映画は『ミッドサマー』に出てくるホルガ村で子どもに読み聞かせ教訓みたいな話だ。しかしアリア・スター監督は日本のインディ映画宣伝界のスピルバーグみたいな存在になったね。現にこうして私は観に行ったわけだ。

 

 ストップモーションアニメは凄く良いし、入れ子構造でメイキングを見せながら本編が進んでいくスタイルは最近観た『アステロイド・シティ』に似ていた。面白いと感じたが、どうにも途中で眠くなることもあった。同時上映の『骨』はなくてもいいかな、ごめん。欲を言うと、あの雰囲気でこの話で、実写で観たいんだよね。

 

 コミューンを抜け出したマリアが、新しい家を見つけて子豚を2匹育てて、それがアナとペドロという人間になった。慈悲を取り戻したマリアが(子供を育てるマリアの姿はキリスト教)、反抗した子供に食べられる恐怖がから豚が人を食べるという肉食への反転、外の世界への恐怖、コミューンの保守性とそれへの回帰、自由へ逃走するも今度は自由から逃走する)、オオカミというコミューンへ助けを求めるまでを描いていて、非常に保守的な内容だ。軍事政権下での自由を否定することへのホラーである。ここもすごく『ミッドサマー』と似ていると思う。

 

 現代社会では実際のところ、アナやペドロのように母を軽視し大切にしていないし、その中でマリアにとってはコミューンこそ本当の理想の自分を守ってくれる場所だったのだろう。もちろんこれ自体が皮肉だろうけど。