@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『スリ・アシィ』

 

『スリ・アシィ』 (Sri Asih) [2022年インドネシア]

 

ジャワ島のムラピ山が噴火し、車で逃げまどっていた若い夫婦が事故で亡くなる。生まれたばかりだった彼らの子どものアラナは孤児院に引き取られ、やがて正義感の強い少女へと育っていく。大人になったアラナは格闘家として活躍していたが、時折、激しい怒りに飲み込まれそうになることに悩んでいた。そんなある日、トラブルに巻き込まれたアラナは、彼女をずっと見守ってきたという謎の組織に助けられる。そこでアラナは自らに秘められた運命を知ることとなる。監督はウピ。ペフィタ・ピアース(アラナ)ほか。

 

 インドネシア初の女性ヒーローといわれるスリ・アシィ。1954年に誕生したコミックを原作に、映画では舞台を現代に置き換えている。監督はウピという方で女性の監督だ。監督&主演が女性でヒーロー映画を作ってしまうんだから(ここだけに注目しても本作が意識しているのは間違えなく『ワンダーウーマン』だろう)、それだけで日本の製作環境よりインドネシアのほうがずっと自由だということが分かる。

 

 本作は明らかにワンダーウーマンを意識していると思うが(ワンダーウーマンのコミック登場は1941年)、腕輪で弾を弾いたり、ヒーロー着地したり、飛べるし、真実の投げ縄のような赤いスカーフが武器だし、自分の力に気付いてからは神様のように振る舞うし、大いなる使命感を背負っているなど、とにかく共通点が多い。ただ狭い部屋の中で戦うシーンはさながらブラックウィドウのようでもあった

 

 スリ・アシィが誕生したのがインドネシアがオランダ領だったことがきっかけだったというのがセリフで触れられるのだが、もちろんオランダの統治の後が日本帝国の植民地支配だが、そのことについてはあまり触れられてなかった。インドネシアにおける支配の歴史は日本よりオランダの方が影響力が強かったというのが人々の認識としてあるのか。「もしかしたらスリ・アシィって摺り足から来ているのか?」なんて思ったりもした(おそらく違う)。

 

 忖度なしの本国のインドネシアでの反応が気になるのだが、私の正直な感想を言うと、「本作より優れたアクション映画はたくさんある」と思う。アメリカのヒーロー映画と言うより、日本の仮面ライダーや特撮ヒーローの1年に1本製作される長編映画のような出来映えに近い(だからアメリカの映画より劣っているという訳ではないです。日本もインドネシアも少ない製作費の中で努力しているのは知っています)。一番「うわ~」と苦笑したのは、ラスボスが出てくるところでラスボスの下っ端が仮面ライダーのショッカーみたいな雰囲気で目だし帽子を被っていたんだけど、あれはおそらく同じ俳優を起用しているの観客にバレないようにするための対策としての目だし帽子なんだろうけど、どうしても笑いが止まらなかった。それに加えてラスボスが出てきて「そうだ俺が全ての元凶だ...爆弾は俺を倒さなければ止まらないぞ」的なセリフで全てを説明してくれて、「なんて丁寧なラスボスなんだ」と思い苦笑してしまった。それでも初めてインドネシアの映画を観たという初体験の気持ちの方が強く、そこまで気にはならなかった。というかこの映画は本国では小さい子供向けに製作されたのかな。

 

 アラナの養母やアラナに力を与えた盲目のおばあちゃんなどカッコイイ女性も出てくるのだが、あまり活躍せず後半は男性たちの方が印象に残る感じなのは勿体ないな。そもそもヴィランやその周辺の悪さをする奴らも男なので、どうしても男の登場人物が多くなるのは分からなくもないし、実際インドネシアでも悪いことをしたり女性や子供も虐待するのは男が多いはずだ。そんな男たちを成敗するスリ・アシィの姿を見て勇気づけられる女性はきっと多いだろう。そういう意味では大変画期的な映画なのだろう。