『ザリガニの鳴くところ』(Where the Crawdads Sing)
ノースカロライナ州の湿地帯で、将来有望な金持ちの青年が変死体となって発見された。犯人として疑われたのは、「ザリガニが鳴く」と言われる湿地帯で育った無垢な少女カイア。彼女は6歳の時に両親に捨てられて以来、学校へも通わずに湿地の自然から生きる術を学び、たった1人で生き抜いてきた。そんなカイアの世界に迷い込んだ心優しい青年との出会いが、彼女の運命を大きく変えることになる。カイアは法廷で、自身の半生について語り始める。
オリビア・ニューマンという女性監督だ。1969年のノースカロライナ州の湿地帯にずっと一人で住んでいたカイアとその周辺にいる人々との話だ。
湿地帯の税金のために作家として大成するカイアが二人の男に出会うも裏切られ、作家として一人で生きていく女性の話かと思いきや、結構な王道ロマンス映画で、おそらく監督としてはラブストーリーの要素を強調したかったのかと思う。悪い意味で裏切られたというか、あのポスターであのタイトルだとけっこうミステリー要素強めだと思うじゃん。それにタイトルが良い感じなのに結果的に意味が伝わってこなかった。
それに私はカイアは作家として成功しているのだで、別に周囲の人間の理解なんて得られなくてもいいじゃないかとすら思った。それを言ってしまうとこの映画が成立しなくなるのだが、それでも裁判での弁護士の説得するシーンがヒーローみたいになってしまい、おそらくあのようなセリフは形が違えどカイア自身が映画の中で表現しないといけないものだったと思うが、とにかく映画のラストに行くにつれてカイアの主体性を感じない。
ラストのカイアとテイトの関係も盛りすぎだなと思うし、テイトがあの貝を発見するくだりもいらない。題材が良いだけに残念だった。