@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『世界のはしっこ、小さな教室』

 

『世界のはしっこ、小さな教室』 (Etre Prof) [2021年フランス]

 

シベリア、ブルキナファソバングラデシュを舞台に、3人の先生の奮闘と学びに目覚めた子どもたちの姿をとらえたドキュメンタリー。識字率アップが国家の使命であるブルキナファソの僻地の村で働く新人教師で、2人の子の母親でもあるサンドリーヌ。バングラデシュ北部の農村地帯のボートスクールで、子どもや女性の権利を守るべく戦うフェミニストのタスリマ。雪深いシベリアに暮らす遊牧民で、伝統の消滅を危惧するスベトラーナ。さまざまな困難に直面しながらも、子どもたちに広い世界を知ってほしいという情熱を胸に教壇に立つ3人の先生の姿を映し出す。監督はエミリー・テロン。

 

 本当はスルーしようかと思ってたのだが、先月『ぼくたちの哲学教室』で男児への教育の重要性を描いた作品を観たのに、女性教師の子供たちへの教育の重要性を説く映画を観ないのは、さすがに私の意義に反するので観た、そして良かった。

 

 まず内容に触れる前にドキュメンタリーを観ていて気になったのだが、スタッフの撮影の仕方の問題か、観ている側の問題か詳しくは分からないんだけど、画面に映る人々がみんなけっこう緊張していてかえって不自然な感じに映っていた。細心の気遣いをして撮影していたのか気になった。まあカメラを意識しないで生活を送れと言う方が特段無理な話なのだが、どうしても『ぼくたちの哲学教室』教師や子供たちがみんなのびのびと映っていたのでそれと比べると気になった。この辺は映画のスタッフが地元の国出身か外国出身かの違いかと思う。ドキュメンタリーの質を比べて気づくことも多かった。


 ドキュメンタリーは児童への教育の大切さだけでなく、ある地域では児童結婚は違法であることと女児教育の持続性の大切さを親にもしっかり伝えていて、教育は何も子供たちだけに行われるわけではないことを明確に示している。それは同時に先生たちの重労働を映してもいるのだが。

 

 またドキュメンタリーに登場する先生は3人とも女性教師だが、これはすごく重要である。女性が長期に安定して収入が得られるのは教員だからだ。これはつい最近まで日本でもそうだったのだ。彼女たちは労働する生活する女性として苦労しつつも、子ども達には(特に女児)、ロールモデルにもなっているのだ。しかしその男女半々の労働現場が抱えている課題が重労働であるのは、未来の労働問題であり、資本主義経済が結局人々の幸せを作らないことを予見させてくれる。

 

 またこのドキュメンタリーは女児への教育の重要性だけでなく、男児への教育の重要性も伝えている。『バービー』でもそうだが、つまるところ女性が直面する問題と向き合うとどうしても現実でもフィクションでも男性の問題も浮上してくるのである。不条理だ。本作ではその不条理さが出てくるのが、シベリアで教育よりも家業をついで早く稼ぎたいと思っている男児たちだ。そんな男児たちに苦悩しながらも教育の重要性を伝えていたあの教師には頭が下がる思いだ。面白いのが、男児のからかいの文化である。あれは兄弟だからというのもあるが、ある男児生徒が失敗すると他の男児生徒が失敗した男児生徒へからかい笑う、それを見た男児は侮辱されたと思い教育なんて好きじゃないと匙を投げてしまい、次第に関心は家業の方へ向く。そうなると教育の持続性は難しいのだが、問題はその男児が家業を継ぐと、次はその家業を継続するために家族を作ることになり、そこに女性が出てくる。そうなると教育されて女性よりより若い女性が好まれるので、結局教育がされなかった若い女性を東女させてしまい、それを子ども達が見るという負のサイクルが生まれてしまう。それが問題なのだ、男児は家業を継いで一人前になるぞと意気込んでも社会の中では結局それに犠牲になる女性が生まれる、それがいけないこと、結果的に社会の貧困と不平等を生んでいることを男児に社会に家族に教えていかなければいけないのだ。教育はこんな大きな課題を抱えているのだ。

 

 もちろん本作はその男児の気持ちを断罪はしない。ただしかたや児童結婚におびえながら進学を目指す女児と比べると、そんな男児はすごく能天気にみえてしまうんだよ。製作側はこれを同時の問題だと思っているようだけど、できれば別々の問題としてドキュメンタリーを制作するべきだったのかな。そういう意味ではやはり『ぼくたちの哲学教室』のほうが男児への教育に特化していてよかったのかも。それでいていかに男児へ非暴力とからかいはよくないかを教えるあの校長先生にも頭が下がる思いだ。