@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『雄獅少年 ライオン少年』

 

『雄獅少年 ライオン少年』(雄獅少年 I Am What I Am) [2021年中国]

 

2世紀ごろ魏晋南北朝時代の中国大陸が発祥とされる獅子舞。現代中国の獅子舞は、前足を担当する1人と、背中と後ろ足を担当するもう1人が獅子となり、そこに楽団も加わって、旧正月や店舗の開店祝いの場などで「招福駆邪」として演じられる。広東の田舎で暮らす少年チュンは家が貧しく、両親は長年にわたり都会の広州に出稼ぎしていた。ある時、自分と同じ名をもつ獅子舞の演者の女の子チュンと知り合ったことをきっかけに、チュンは獅子舞の世界にあこがれを抱くようになる。かわいい女の子を目当てにチュンに誘われ参加したマオ、そしてマオの知り合いのゴウとともに獅子舞チームを結成したチュンは、若いころは町一番の獅子舞の踊り手だったという干物屋の店主チャンに師事し、獅子舞の演者として成長していく。監督はソン・ハイペン

 

 全体的に非常に面白かった。みんなが綺麗なCGアニメーションを軸に獅子舞の躍動感が凄いだけでなく、師匠と弟子の絆、伝統から排除されていた子供たちや女性や中年が伝統に挑戦していく姿、面白い修業、ライバルが最後に味方になる、などのみんなが大好きな要素が上手く脚本に組み込まれており、とにかく楽しい映画で、かつ胸が高まる映画でもある。

 

 特にチュンの親が出稼ぎで長い間不在で孤独なのと、今度は親の代わりに一家の稼ぎ手にならなければいけないなど、中国の子供たちを取り巻く社会問題もこの映画は扱っている。それでも獅子舞に挑戦する姿に感動する。最後にチュンがライオンになる姿は本当に興奮したよ。

 

 音楽も良くて、獅子舞を踊るときは伝統的な音楽を流しつつ、修業するときはカンフー映画で流れていそうな音楽が流れる。一方でチュンの感情が沈んでいる時はインディロック調の音楽が流れたり、ラストの本当の意味で挑戦するときはラップみたいな音楽が流れるので、非常にモダンな視線の音楽の使い方で面白かった。

 

 あの一番大事なラストでラップを流すセンスは、この映画が所謂メインストリームから排除された人間たちが成り上がっていく姿を描いた本作のテーマを非常によく表現しているので、いわばこの映画は獅子舞という伝統を描いているよりかは、反抗とかラップの精神を描いている映画ですよと提示していたのだなと思った。

 

 全体的には非常に面白い映画だったのだが、女性の描き方はかなり一枚岩だったと思う。師匠のチャンの妻アジェンは少し都合が良すぎる存在かな。また主人公のチュンに獅子舞を勧めるきっかけを作ったチュンももう少し活躍して欲しかったなと。てっきり同じ名前だから、ラストは足を痛めたチュンの代わりに出場するかもしれないなんて淡い期待を抱いたのだが、本当にただの期待で終わった...