@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『秘密の森の、その向こう』

 

『秘密の森の、その向こう』

大好きだった祖母を亡くした8歳の少女ネリーは両親に連れられ、祖母が住んでいた森の中の一軒家を片付けに来る。しかし、少女時代をこの家で過ごした母は何を目にしても祖母との思い出に胸を締め付けられ、ついに家を出て行ってしまう。残されたネリーは森を散策するうちに、母マリオンと同じ名前を名乗る8歳の少女と出会い、親しくなる。少女に招かれて彼女の家を訪れると、そこは“おばあちゃんの家”だった……。

 

 こういう未来の自分の家族が、過去の自分の家族に会って何かを得たり、迷っていた自分に何か励ますという設定のお話はたくさんある。たくさんありすぎて、よく家族の絆の強さを再確認させる機能を持ったメッセージを発してしまうこともある。(特に日本のアニメだと誰とは言わないが絶対そういう保守的なメッセージを入れている) しかしそこはセリーヌ・シアマ監督、彼女は個人に焦点を当てている。そして私もこっちの作品の方が好きだ。

 

 ネリーが森でマリオン(ネリーの母親が8歳の時の姿)と出会い、そこから物語が続いていくんだけど、まず映画の視点がネリーだけでなく、8歳のマリオンにもしっかりと焦点が当たっていて、時空を超えているのにまるで同じ時間軸に存在しているように見える。これは派手な演出を避けたことで、上手に表現できていた。面白いのが、手術を受けるか迷うマリオン(自分が長く生きるか分からない)が、ネリーが自分の娘だと知って手術をうけることを決意するのではなく、ネリーと話し合って、しっかりと友達として愛情を感じることができて自尊心を取り戻して手術を受けようと決意したシーンが大変良かった。これはマリオンが母性から判断したのではなく、自尊心から判断したのだ。だからこそ、この映画の設定が子どもである必要があったんだと思う。母性というものを神聖視しないセリーヌ・シアマらしいところだ。(この辺はぜひ日本のクリエイターも見習ってほしいところだ。なぜ私がこういうことを言うのかというと、セリーヌ・シアマ監督は日本のアニメ映画が好きだからだ)

 

 映画としては、上映時間が短くて(個人的にはこの長さで全然問題なしだし)、少し物足りない気がするし、オフビートで静かな作品だが、こういう題材に騒がしい演出とかはいらないし、音楽もラストに流れる一曲だけだが、しっかりとその曲のメッセージがいかされている演出で良かった。この辺はさすがセリーヌ・シアマだと思う。次回作も絶対に観に行きたいと思う。