@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ナイトメア・アリー』

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『ナイトメア・アリー』(Nightmare Alley)

 

ショービジネスでの成功を夢みる野心にあふれた青年スタンは、人間か獣か正体不明な生き物を出し物にする怪しげなカーニバルの一座とめぐり合う。そこで読心術の技を学んだスタンは、人をひきつける天性の才能とカリスマ性を武器に、トップの興行師となる。しかし、その先には思いがけない闇が待ち受けていた。

 

 まず映画として監督のこだわりが凄い。美術とかメイクとかしっかりと時代に合わせてあるのだろう。またシーンの移り変わりが多いのに、全てのシーンが余すことなくしっかりと撮られており映画としてほぼ完ぺきと言っていいと思う。話の内容も映画の雰囲気も大衆受けしなさそうだが、私は個人的にかなり好きだった。

 

 それにキャストはとにかく豪華だ。(セリフがあるキャストのほとんどが白人なのはどうかと思うけどさ) 『キャロル』の続編かよ思うくらいのゴージャスさがあるケイト・ブランシェットルーニー・マーラ。改めて本当にきれいだと思うのがトニ・コレット。変わらずセクシーなデビッド・ストラザーン。冒頭のセリフを言わせたいがためにキャスティングしたのではと思いたくなるくらいこういう役が似合うウィレム・デフォー。デルトロ作品お馴染みのリチャード・ジェンキンスロン・パールマン。あと個人的に好きなホルト・マッキャラリーとメアリー・スティーンバージェンとティム・ブレイク・ネルソン。でも一番凄かったのは主人公のブラッドリー・クーパーだ。最初彼が主演と聞いたときにデルトロ作品にしてはハンサム過ぎないかと思ったけど、全然彼じゃないとダメだったと思うくらい良かった。そもそもトニ・コレットルーニー・マーラケイト・ブランシェットと恋仲になるくらい魅力がないとダメな役だからブラッドリー・クーパーじゃないとね。

 

 映画では読唇術とか霊媒師とかを男の権力欲や有害なマチズモを体現する要素として描いており、舞台は1940年代アメリカであるが、とても現代的だと思った。この辺は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』に通ずるものがあるなと思う。一瞬ジャンル映画(一方は西部劇、一方はゴシックホラー)だと思わせておいて、映画の中ではしっかりと人間を描いて、現代的な問題を取り上げる、私はこういう映画が好きなんだな思った。一方でこういう映画が作れるのは、根本で人間を信頼し、愛していないとダメだなとも思った。なので私は一生作れないな(笑)人間嫌いなもんで。あとこの考察にたどり着いて思ったのが、デルトロ監督とティム・バートン監督の徹底的な違いが、いかに人間を愛しているかだと思う。デルトロは人間が好きで、バートンは人間嫌いなんだよねたぶん。

 

 またこういう映画にありがちな男に振り回される女性たちも。この映画には存在せず登場する女性たちはみんな大変魅力的だ。特にスタンに金言するモリーの私は自分の限界を知っているというセリフはおそらくこの映画の肝だ。有害なマチズモが際限なく世界を破滅させている今だからこそ、己の限界は知っておくべきなのだろう。