@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ボーはおそれている』

 

『ボーはおそれている』 (Beau Is Afraid) [2023年アメリカ]


日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの男ボーは、つい先ほどまで電話で会話していた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。その後も奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、現実なのか妄想なのかも分からないまま、ボーの里帰りはいつしか壮大な旅へと変貌していく。監督&脚本はアリ・アスター。出演はホワキン・フェニックス(ボー・ワッセルマン)、パティ・ルポーン(モナ・ワッセルマン)、スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン(セラピスト)、ネイサン・レイン(ロジャー)、エイミー・ライアン(グレース)、ドゥニ・メノーシュ(ジーヴス)、カイリー・ロジャース(トニ)、ヘイリー・スクワイワーズ(ペネロペ)、パーカー・ポージー(エレーヌ)、リチャード・キング、ビル・ホーダー、マイケル・ガンドルフィーニほか。

 

 アリ・アスター監督の批評ないし考察は世に沢山溢れているのでここでは簡単な感想を。今までのアリ・アスター作品は「女性が何かしらの才能や強かさを持った高潔な人物」で「男性は身体だけを乗っ取られる空虚な存在」なんだという作家性があって、それを女性が主人公の作品で作っていたので、良い意味で毒っ気が中和されていて、それに加えてホラー作品で好みは別れると思うがすごく観やすい作品だったのだと思うが(それゆえ"癒された"感じる人がいて当然だと思う)、本作は若干過去の作家性を引き継ぎつつ新しいことにチャレンジして、かつ男性が主人公になってしまったことによってアリ・アスターの毒っ気が前面に出てしまっており、作品を観終わったころには監督の理性を疑う始末になってしまった。ただ凄く意欲的でよく出来ている作品だと思う。

 

 そもそも映画の冒頭からA24のロゴと一緒にモナの会社のロゴが出てくるので、映画のオチとしてはモナ自身がこの映画すら支配しているというかなりメタ的な視点で始まり終わる映画で、肝心のボーも見ている世界が危険まみれで、ボーの視点から見る人間はみんな危ない人間なのだが、そもそもボー自体が信用できない語り部みたいな主人公で、冒頭のボーの危険な世界も結局ボーの誇大な妄想なのか?とすら疑いたくなるし、となると本作自体が全て妄想かとすら疑いたくなる。まあそういう映画があっていいと思うが、個人的には好きじゃない。何なら同じ神は全てを見ているというテーマなら『トゥルーマン・ショー』の方がずっと親切で面白い映画だ。

 

 それでも「やっぱりアリ・アスター好き」「アリ・アスターの映画気持ち悪い」とみんなで共同体験できる映画って少ないので、これからもアリ・アスター監督にはこういう映画を作り続けて欲しいなと思う(本人もそれが分かっていてあえてネットのミームという役どころを引き受けている気がする。彼はそんなことぐらいわかっていると思うし)。