柔を持って剛を制す
『シャン・チー テン・リングスの伝説』(Shang-Chi and the legend og the Ten Rings)
犯罪組織を率いる父に幼いころから厳しく鍛えられ、最強の存在に仕立て上げられたシャン・チー。しかし心根の優しい彼は自ら戦うことを禁じ、父の後継者となる運命から逃げ出した。過去と決別し、サンフランシスコで平凡なホテルマンのショーンとして暮らしていたシャン・チーだったが、伝説の腕輪を操って世界を脅かそうとする父の陰謀に巻き込まれたことから、封印していた力を解き放ち、戦いに身を投じる。
MCUの第4フェーズの幕を開ける最初の作品であり、アジア系でMCU初めの主演作である。とにかくよく出来た脚本でかつ素晴らしいアクション、そして人物描写が素晴らしい。
特にトニー・レオン演じるシャン・チーの父親役はかなり素晴らしい。最初の妻のインと組手するシーンなんてMCU史上最もセクシーなシーンじゃないかな。よくR指定にならなかったな(笑) そして本作もマーベル伝統の父親の負の歴史を息子が清算するというお得意な話になっているが、アジアの家父長制やMCU世界における父親と息子の世界に置いて行かれていた妻や娘の話もとても濃く描かれており、単純な父と息子ストーリーになっていない。父親の暴れる剛を母と息子と娘の柔が制する話であった。あとこの映画における柔を担うシーンは沢山あり、オークワフィナの笑えるセリフだったり、神話の動物だったりする。
あとアメリカにおけるアジア系アメリカ人とアメリカにやってきたアジア人のコミュニケーションがかなりリアルだったと思う。アメリカ人として完全に育ったケイティがシャン・チーの名前を上手く発音できなかったりする話とか。
また本作では『アイアンマン3』に出てきたマンダリンが登場するが、実は『アイアンマン3』にマンダリンが出てきたさいにホワイト・ウォッシュだと批判された経緯があるのを踏まえつつ、ある種MCUから批判に対してのユーモアある返答のような演出だと思った。