『猫が教えてくれたこと』(Kedi)
トルコの古都イスタンブールに受け継がれてきた、猫と人間たちの幸せな関係をとらえたドキュメンタリー。ヨーロッパとアジアの文化をつなぐ地として、数千年にわたって繁栄してきた大都市イスタンブール。この街で暮らす野良猫は住人たちから食料や寝床を与えられ、人々に生きる希望や癒やしを与えながら自由気ままに暮らしている。地上から10センチメートルしか離れていないカメラを使用して猫の目線でイスタンブールの街をとらえ、生まれも育ちも異なる7匹の猫たちと人間たちが織り成す優しい触れ合いを描き出す。
2016年、アメリカ製作。上映時間は79分。レイティングはG。日本配給はアンプラグド。
監督はジェイダ・トルン。
イスタンブールに住む猫たちをとらえたドキュメンタリー。今作の舞台であるイスタンブールは非常にきれいな街並みでそこで暮らしている人々はいわゆる東京で暮らしている人々とは全く違う。だからこそ猫も暮らしやすいのだろう。またイスタンブールの人々は猫に合わせて生活や仕事営んでいるだけでなく、猫が街にとって大事な存在であるのを認識しており、みんなで猫を支えようと活動もしている。猫に対して非常に紳士的で謙虚だ。
また猫は信仰の対象にもなっており、インタビューを受けている人々は口々に猫を神の使いだと言っている。それもそのはず、イスタンブールに住む人々の多くはムスリムであり、ムハンマドは猫を敬愛していたのである。猫が神の使いとして大切にされているのは納得である。
人々は猫を思い思いの表象で語るのだが、その多くは女性に例えられるのだが、ある女性芸術家の例えが鋭い。彼女は猫を「自由に生きている女性」として捉えていた。女性に対して抑圧の多いイスタンブールの社会を自由に生きる猫は彼女の憧れだ。この視点をしっかりと映画にいれた監督の正体を気になって調べたら、イスタンブール出身の女性監督チェイダ・トルンという方だった。監督もその女性芸術家に共感する部分がきっとあったのではないだろうか。
そんな猫の理想郷イスタンブールでも都市化の波がやってきている。それでも人々は猫を守るために、猫の生活を第一に考える姿勢は変わらない。そういえば東京に住んでいる私は猫のことをどのくらい気にかけて生活しているだろう。人に優しい街は猫にも優しいだろう。