@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』

 

ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』 (Ghostbusters: Frozen Empire)

 

真夏のニューヨーク。日差しが降り注ぐビーチで大勢の人々が海水浴を満喫するなか、海の向こう側から突如として巨大な氷柱が大量に現れ、街は一瞬にして氷に覆われてしまう。ゴーストバスターズとしてニューヨークの人々をゴーストたちから守ってきたスペングラー家は、その元凶が全てを一瞬で凍らせる「デス・チル」のパワーを持つ史上最強のゴーストであることを突き止め、事態を解決するべく立ち上がる。監督はギル・キーナ。脚本はギル・キーナ&ジェイソン・ライトマン。出演はポール・ラッド(ゲイリー)、マッケンナ・グレイス(フィービー)、フィン・ウルフハード(トレヴァー)、キャリー・クーン(キャリー)、セレステ・オコナー(ラッキー)、ローガン・キム(ポッドキャスト)、ビル・マーレイ(ピーター)、ダン・エイクロイド(レイモンド)、アーニー・ハドソン(レイモンド)、アニー・ポッツ(ジャニーン)、クメイル・ナンジアニ(ナジーム)、パットン・オズワルド(ヒューバート)、ジェームズ・アカスター(ラーズ)、エミリー・アリン・リンド(メロディ)ほか。

 

 怒り狂った感想を書いた前作『ゴーストバスターズ アフターライフ』よりかは本作の方が好きです。自分でもびっくり。ちょっと和解できそう。それもきっと前作より監督が交代したのが大きい、「よっ、英断!」。ジェイソン・ライトマンのお父さんレガシーを見せつけられた分、その反動で本作は純粋に邪念無しで楽しかった。企画モノみたいな立ち位置で、そりゃ楽しいよね。子供たちだけで何かを解決しようとするところにおじいちゃんが絡んでくるという話はまんま監督の過去作の『モンスター・ハウス』みたいですごく楽しかった。

 

 フィービーとあの幽霊の女の子メロディの関係はすごくクィアっぽかったんだけど、もう少し2人の関係を掘り下げても良かったのかな。まあコロンビアかソニーが大作でレズビアンを描けくはずがないけど。フィービーが幽霊になったあのシーンとか、ラブストーリーのテンプレートじゃないですか。

 

 ただ悪い部分もあって、登場人物が前作から増えて、1人ひとりの人物描写が薄くなってしまっているし、そもそもどうやってゴーストバスターズは生計たててるんだという疑問も(それを言ったらお終いだけど)。また相変わらず新旧キャストのケミストリーの無さも見られたし編集ももたついている。あとフィービーがゲイリーのことを父と呼ぶみたいなクダりはまるまる必要ない。

 

 良いところもある。大量のマシュマロンは可愛いし、新しいキャストも良い。何よりダン・エイクロイドが改めて凄く良いと思ったので、彼の演技をもっと他の映画でも見たいなと思った。

 

『オッペンハイマー』

 

オッペンハイマー』 (Oppenheimer) [2023年アメリカ]

 

第2次世界大戦中、才能にあふれた物理学者のロバート・オッペンハイマーは、核開発を急ぐ米政府のマンハッタン計画において、原爆開発プロジェクトの委員長に任命される。しかし、実験で原爆の威力を目の当たりにし、さらにはそれが実戦で投下され、恐るべき大量破壊兵器を生み出したことに衝撃を受けたオッペンハイマーは、戦後、さらなる威力をもった水素爆弾の開発に反対するようになるが……。監督&脚本はクリストファー・ノーラン。出演はキリアン・マーフィ(ロバート・オッペンハイマー)、ロバート・ダウニー・Jr.(ストローズ)、エミリー・ブラント(キティ)、フローレンス・ピュー(ジーン)、マット・デイモン(レスリー)ほか。

 

 基本的に退屈になるであろう伝記映画を、3時間の大作なのにハラハラさせながらテンポよく進んでいく作りにしたのは本当に凄いと思う。私はノーランの映画を情熱を持って分析できる人間ではないのだけど、本作に至っては事前にあらゆるメディアで情報やら解説やらが溢れていたので、それらを事前にチェックしていたおかげであまり難解な印象は受けなかった。でも見逃していた何かはきっとあるだろうな。日本でもヒットしているみたいですが、それはアカデミー作品賞を受賞したからなのか、それとも違うのかは分からない。

 

 ただ面白く感じる分、その面白さが自分の中で罪に変わることが何回か起きる。特にロスアモスの核実験のシーンとか、仲間の科学者が集まってくるシーンとか、本当に心が躍ってしまったし、オッペンハイマーが日本に原爆が落ちたかどうか、ずっと待っているシーンは私もオッペンハイマー同様にハラハラしてしまった(広島と長崎では酷いことになっているのに)。映像表現というのは本当に罪で、善悪の判断を鈍らせる恐ろしいメディアだなと改めて思った。

 

 『デューン 砂の惑星 PART2』で核ミサイル撃っておいて、その後の汚染とか考えないのかと思っていたので(別にこれだけではないですが)、それと比べると本作の核や原爆の描き方は誠実には映った。ただそれらを正しく描いたというだけで評価させるようになるのは少し違和感を覚える。ただ日本でも『ゴジラ-1.0』みたいな作品もあるし、それは日米お互い様だろう。少なくとも日本の大手メディアで『ゴジラ-1.0』に天皇制批判や戦争加害の歴史を描いていないという批評が載ったというのを聞いてないし見てもいない。その点『オッペンハイマー』についてはその日本の被害について描写がぬるいみたいな記事を大手映画メディアが載せていたりしたので、アメリカの誠実さを考えたり。と言いながらも簡単に言うと『ゴジラ-1.0』も『オッペンハイマー』も二つとも好きな作品ではないです。技術が凄いとか言われても、それが"売り"なんでしょうと思うし。オッペンハイマーの罪についての映画だけど、名誉回復に一役買っている側面もあるし。

 

 それより女性の描写の悪さの方が個人的に抗いたい気持ちだ。オッペンハイマーが尋問を受けているシーンでインサートとしてオッペンハイマージーンとセックスしているシーン(あの体位、何ていうの?)をキティが見るという、たいへん謎なシーンである。それ、ノーラン、お前の妄想だろって思ったね。女の人生が全て男と紐づけられてるとでも思ってるのか。本作は広島で高校生と大学生向けに鑑賞会したらしいけど、ああいうの事前に言ったのかな。ドラマとか映画のセックスシーンってポルノと違って唐突に表れて、それが結構衝撃になるので処理できないことが多いと思うのですが、高校生とか大学生はまだ若いし、全然映画とかドラマ観ていない子たちだったらけっこうトラウマになるだろうな。

 

『ラブリセット 30日後、離婚します』

 

『ラブリセット 30日後、離婚します』 (Love Reset) [2023年韓国]

 

知的でハンサムだが不器用なノ・ジョンヨルと、家柄もキャリアも申し分ないが破天荒な性格のホン・ナラは大恋愛の末に結婚したが、お互いの価値観の違いに耐えきれなくなり離婚を決意する。裁判所の調停で熟慮期間を経た30日後に離婚することが決まったものの、その帰り道に交通事故に遭い、2人とも記憶喪失になってしまう。愛した記憶も憎み合った記憶もすべて失った2人は、家族や友人を巻き込みながら記憶を取り戻そうとするが……。監督はナム・デジュン。出演はカン・ハヌル(ジョンヨル)、チョン・ソミン(ナラ)ほか。

 

 典型的なラブコメだけど"再婚劇"でもある。随所にあるメタ的な「映画みたいな」というセリフが繰り返される。ベタっていえばそうだけど、最後まで楽しく観られたのは役者たちの愛嬌のおかげだ。愛嬌って本当に大事だね。

 

 殺したいほど憎んでいる相手をまた好きになるには、一度記憶を無くさないといけないというのが本作のテーマだけど、その殺したくなる2人の状況について観客に提示される情報がアンフェアな感じが。収入格差がある男女カップルで、結局それが一番の別れる理由はコレ(収入格差)です!と製作側から言われている気がして、それだと全然ロマンチックじゃない。こんな王道なラブコメならもっとロマンチックで良いのにね。

 オチ的にはジョンヨルは記憶を取り戻してナラは忘れたままというのがどうもね。記憶=収入でそれで格差を埋めようとしているような印象も。眠れる森の美女が知らない男と付き合うみたいな強引さがあると思う。

 

『ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター』

 

ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター』 (The Piano) [1993年オーストラリア・ニュージーランド・フランス] [2024年4Kデジタルリマスター]


19世紀半ば。エイダはニュージーランド入植者のスチュアートに嫁ぐため、娘フローラと1台のピアノとともにスコットランドからやって来る。口のきけない彼女にとって自分の感情を表現できるピアノは大切なものだったが、スチュアートは重いピアノを浜辺に置き去りにし、粗野な地主ベインズの土地と交換してしまう。エイダに興味を抱いたベインズは、自分に演奏を教えるならピアノを返すと彼女に提案。仕方なく受け入れるエイダだったが、レッスンを重ねるうちにベインズにひかれていく。監督&脚本はジェーン・カンピオン。出演はホリー・ハンター(エイダ)、アンナ・パキン(フローラ)、サム・ニール(スチュアート)、ハーヴェイ・カイテル(ベインズ)ほか。

 

 全体的に男性の身体を非常にエロティックに撮っていて(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』でもそうだったけど)、特にお尻を必要以上にしつこく撮っている。ゲイの男性監督だってあんなに男性のお尻を撮らないよ。あれは見る女性、見られる男性を意識しているのだろうし、90年代に非常に観客(特に男性)にインパクトを残しただろうな。女性は男性のここも見ているんだよと言っているのかもしれない。

 

 またこの女性は男性のここを見ているというこの映画の画期的な点で言うと、エイダが最後に好きになるのがいっけん粗野な感じでちょっと暴力的だけど趣味を理解してくれるベインズを恋愛の相手として主体的にエイダが選んでいるという点だ。世間的にも観客的にも、どう考えても知的なスチュアートの方が魅力的に見えるのだが(ましてはそれがサム・ニールだ)、それでも最終的にスチュアートをふるのだ(まあ指を切り落とすという史上最低な行為をしたことの反動もあると思うけど)。本作のエイダは『風と共に去りぬ』であのバトラーをふったスカーレットに続くかなり英雄的ヒロインだと思う。またベインズは土地持ちで、エイダはピアノという才能がある、持っている者同士の恋愛でもあるので、何か持っているもの同士こそ恋愛でうまくいくという非常にモダンな視点の恋愛映画でもあると思う。

 

 エイダは声を奪われている女性であるが、自分で恋愛する相手を選び、時に男性の身体を弄ぶ積極的な女性だ。本作は女性の主体性と恋愛についての凄い映画だと思う。

 

『ビニールハウス』

 

 

『ビニールハウス』 (Greenhouse) [2022年韓国]


貧困のためビニールハウスに暮らすムンジョンは、少年院にいる息子と再び新居で暮らすことを夢見ていた。その資金を稼ぐため、盲目の老人テガンと、その妻で重い認知症を患うファオクの訪問介護士として働いている。ある日、ファオクが風呂場で突然暴れ出し、ムンジョンと揉み合う際に床に後頭部を打ちつけ、そのまま亡くなってしまう。ムンジョンは認知症の自身の母親をファオクの身代わりに据えることで、息子と一緒に暮らす未来を守ろうとするが……。監督&脚本はイ・ソルヒ。出演はキム・ソヒョン(ムンジョン)ほか。

 

 監督は女性で、なんと私と同世代だ。もうそんな時代になって来たかと感慨深い。初の長編映画で脚本も編集も自身によるものらしい。ということは全体的なまったりとした演出も意図的ということだろう。真面目な方だな。それなのに日本語予告がだいぶ監督の意図を無視して作られている。『パラサイト 半地下の家族』を意識したキャッチコピーがつけられている。正直、予告編が一番面白かったけど、あまりにも監督の演出を無視しすぎじゃないかな。

 

 今年だけで視覚障害をプロットに置いた映画を立て続けに観たのだが、個人的にそれがあまり好きじゃない。ということはおのずと本作もあまり好きではない。しかも認知症とか精神疾患の描き方も少し悪い気がするし。しかもそれらが全てネガティブなものとして描かれているし。『梟ーフクロウー』よりかは煽情的じゃないにしろ、やはり面白さは『梟ーフクロウー』のほうが面白かったな(罪ですね)。

 

 まあさすがにラストのビニールハウスが燃えても息子とその友達たちはさすがに死んでないだろうと思いたいけど、映画としてもさすがにムンジョンに不幸を詰めすぎているような。それでいてまったりとしたテンポで進んでいく映画なので退屈だった。罪を与えるというテーマもムンジョンが急に自分を殴ることで自身に下しているのだけど、急に唐突にそれが現れるので、その罰の描き方も上手くいっていないように感じた。

 

 視覚障害である彼も認知症と診断されただけで自殺しようとしたり、殺された女性も主体性をずっと奪われているし、ムンジョンを慕っていたあの女の子の殺人も唐突だ、とにかく社会問題や病気や障害を描きたいというより、観客に"衝撃"を与えたいだけなのかもしれない。

 

『MONTEREY POP モンタレー・ポップ 4Kレストア・5.1chリミックス版』

 

『MONTEREY POP モンタレー・ポップ 4Kレストア・5.1chリミックス版』 (Monterey Pop) [1967年アメリカ] [2024年4Kレストア]

 

1967年に開催された「モンタレー国際ポップフェスティバル」を記録した音楽ドキュメンタリー。ヒッピームーブメントの真っただ中にあった1967年6月、ロックンロールの新時代を先導することになる「モンタレー国際ポップフェスティバル」がカリフォルニア州モンタレーで開催された。同フェスをきっかけに世界へと躍り出たジミ・ヘンドリックスジャニス・ジョプリンオーティス・レディングをはじめ、ジェファーソン・エアプレイン、サイモン&ガーファンクル、ママス&パパス、ザ・フー、ラビー・シャンカールら多数のアーティストが出演し、大規模なロックフェスティバルの先駆けとなった。監督はD・A・ペネベイカー。

 

 映画は元々1967年の作品だ。まず驚くのが撮影の仕方とスタイルだ。当時の音楽というかフェスとかのドキュメンタリーが少ないのが幸いして、ナレーションなしの生のエネルギーがあふれている映画になっている。「ここ」っていう見せ場を作り手が提供しないのが独特。ランダムに映される観客の姿もとても良くて、特にファッションとか髪型が良い(少し女性にモノのように撮っている印象も受けた)。過去のフェスを取り上げているのに、なぜか未来を見ているような気分にさせる。ジョナサン・デミは少なからず、本作を観て『ストップ・メイキング・センス』を作ったんじゃないかな。

 

 私はジャニス・ジャップリンとママス&パパスが見れればいいやくらいに思っていたのだが、その後に出てくるThe WhoのギタークラッシュとJimi Hendrixのギター燃やすパフォーマンスの方が印象に残った。特にジミヘンのパフォーマンスなんて神がかっていて、観客に引かれているのも含めて歴史の残るパフォーマンスってああいうのだなと。

 

 ラビー・シャンカール(Norah Jonesの父!)のパフォーマンスも良くて、あの速弾きなんてすごいとしか。バンドメンバーに一人女性がいたのも画期的だし。初めは観客もどう聞いていいのか分からなかったのに、後半にはしっかり盛り上がっていく様を15分~20分かけて取り上げているのも印象的。ジミヘンが歴史に残るパフォーマンスなら、ラアビー・シャンカールは人々の音楽の聴き方を変化させたパフォーマンスだ。

 

『ブリックレイヤー』

 

『ブリックレイヤー』 (The Bricklayer) [2023年アメリカ・ブルガリアギリシャ]

 

ヨーロッパでアメリカの諜報活動への抗議デモが広がる中、ギリシャテッサロニキで米政府に批判的な女性記者の遺体が発見された。その背景には、反米を訴えるジャーナリストの殺害をCIAの仕業に見せかけることで、アメリカに対する世の反感をより高めようとする意図が存在した。やがて事件の容疑者として、1年半前に死亡したはずのCIA諜報員ヴィクター・ラデックの存在が浮上。捜査が手詰まりとなる中、米政府はかつてラデックの同僚だった元CIAエージェントのスティーヴ・ヴェイルに協力を要請する。レンガ職人として静かに暮らしていたヴェイルはかつての友との因縁に決着をつけるため、捜査に協力することにするが……。監督はレニー・ハーリン。出演はアーロン・エッカート(スティーヴ)、ニーナ・ドブレフ(ケイト)、クリフトン・コリンズ・Jr.(ヴィクター)ほか。

 

 全体的にすごくオジさんの夢映画であった。自分で作っていて恥ずかしいとないんだろうか。マイルズ・デイビスを聞いてジャズについて若い女に説教する...マンスプレイニング! 『ラ・ラ・ランド』のセブかっ! まだ『ラ・ラ・ランド』の方がユーモアあるし、男女の年齢が近いからマシに見える。

 

 CIAのケイトの仕事をとにかく軽んじて描かれていて、ものすごくプロフェッショナルというのを軽視している。そのくせにレンガ職人に誇りを持っているみたいなスティーヴの設定も謎だ。ただその職人道具も人殺しの道具にすぐしてしまうし、とにかく職業の描き方が一貫してない。私がCIAに肩入れするなんて、相当だぞ。同じ題材なら『イコライザー』の方がずっと面白い。この手のジャンルの映画で『イコライザー』は本当によく出来ているんだと再確認した。それにマッコールさんならマンスプレイニングしないだろう。

 

 まあオジさん夢映画なら、いっそうのことアーロン・エッカートのアイドル映画にすべきだったと思うし、そのへんをもっと強調するべきだと思う。もっと服を脱ぐシーンを入れるとか、躍らせるとか、いかようにも描き方はあったのに。