
『人間の境界』 (Zielona Granica) [2023年ポーランド・フランス・チェコ・ベルギー]
「ベラルーシを経由してポーランド国境を渡れば、安全にヨーロッパに入ることができる」という情報を信じ、幼い子どもを連れて祖国シリアを脱出した家族。やっとのことで国境の森にたどり着いたものの、武装した国境警備隊から非人道的な扱いを受けた末にベラルーシへ送り返され、さらにそこから再びポーランドへ強制移送されることに。一家は暴力と迫害に満ちた過酷な状況のなか、地獄のような日々を強いられる。監督はアグニエシュカ・ホランド。出演はマヤ・オスカシェフスカ(ユリア)ほか。
全編モノクロで、1は家族(難民)、2は国境警備隊、3は活動家、4はユリア(個人)の4つの話が交差する設定で、けっこう理解しやすく色んな切り口を用意してくれている。本当にヨーロッパの難民の窮状を伝えるために製作されているのだろう。ラストは現在のウクライナへの言及もあるし、出演者も制作者も難民への支援活動をしている人たちが集まったのだそう。
共感を呼ぶために作ってあるので仕方ないが、個人的に見え方が好きじゃなかった。難民家族の窮状や虐待を見せた後、すぐに国境警備隊の加害者にも家族と人生と葛藤があるんだよっていう展開の仕方がフェアのように見せて全くフェアじゃない思う。ただ3と4でおのずと救いになるのだが、ああいうのを見て人は難民に関心が行くので、リアルと言えばリアルで、そういう人々が関心を抱く一連の流れをこの映画が証明しているのだろうな。
気骨ある映画であるが、私は本作を観ながら日本の入管の虐待を思い出した。日本は本作で描かれている虐待を国境じゃなく入管という公的な場所でやっていたんだから、ずっとたちが悪い。