郊外にある自宅と職場の金型工場を路線バスで往復するだけの単調な毎日を送っているハッチは、地味な見た目で目立った特徴もなく、仕事は過小評価され、家庭では妻に距離を置かれて息子から尊敬されることもない。世間から見ればどこにでもいる、ごく普通の男だった。そんなハッチの家にある日、強盗が押し入る。暴力を恐れたハッチは反撃することもできず、そのことで家族からさらに失望されてしまう。あまりの理不尽さに怒りが沸々とわいていくハッチは、路線バスで出会ったチンピラたちの挑発が引き金となり、ついに堪忍袋の緒が切れる。
まあボブ・オデンカークがうだつの上がらいおじさんが実は凄腕のちょっと人間味あふれる殺し屋で、家族の命が狙われたのを機についに殺し屋に転じるって展開はかなり魅力的だし面白い。アクションもさすが『ジョン・ウィッグ』の脚本家が書いただけあるなと思う。
しかし主人公の周りにいる人間がかなりご都合主義だと思う。まず妻は夫が血まみれで帰ってきても特に気にしないし、明らかに殺し屋だと分かっても特に意に介さないし、「ちゃんと帰ってきてね」的な甘えるシーンを差し込むのだが、正直都合が良すぎるし、逆に人物描写として悪い。最後は妻が主人公に見切りをつける終わりの方が絶対に良い。そしてもっと悪いと思ったのが、今どきあんなステレオ・タイプなロシアマフィアをよく登場させたなと思う。それに猫も可哀そうだ。