@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ローズメイカー 奇跡のバラ』

人も薔薇も育てるには忍耐と時間とチャンスと資源が必要

 

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『ローズメイカー 奇跡のバラ』

 

 フランス郊外で父が遺した小さなバラ園を経営する頑固者のエヴ。人を雇う余裕などなく、倒産寸前に追い込まれたバラ園に、職業訓練所から派遣された3人の素人がスタッフとして加わることとなった。しかし、バラに関して何も知らない彼らはエヴを手助けするどころか、足を引っ張ることに。そんな中、エヴは世界初となる新種のバラの交配を思いつき、バガテル新品種国際バラ・コンクールに挑むことを決心するが……。

 

 

 邦題に「奇跡」が付いていたのでスルーしょうとしていたのだが、Twitterでの評判が良かったので鑑賞したが、大変良い映画だった。私の好きな要素が詰まった映画だった。

 

 まず女性とその仲間たちの仕事に勤しむ系映画である。本作はまず薔薇を育て、そして流通するまでをしっかりと描いており、特に薔薇を作る才能はあれど、それ以外の事務や販売の能力は仲間たちに一任しているシーンは大変良いし、あれだけで彼らの仕事に対しての才能や情熱が伝わってくる。特にそんな理由で仕事辞めるのって思ってしまうくらいプライドが高いエヴをあなたを見捨てませんと叱咤する事務のヴェラは大変すばらしい。

 

 次に薔薇の人工受粉というある意味神に近い行動をしているエヴが結局コンクールに出店する薔薇の受粉に失敗するも、最後は従業員たちであるサミール、ナデーシュ、フレッドの自然に受粉させた薔薇が大成するのが大変良い。しかもその受粉方法を教えたのは他でもないエヴ本人だ。この自然にできて、かつエヴがかけた時間や忍耐や資源が使われているこの薔薇は、実は従業員たちであるサミール、ナデーシュ、フレッドたち本人のことでもある。これは薔薇を育てる映画であるが、同時に人を育てる仕事映画でもある。そして人間も薔薇も一人前になるには、この映画で薔薇にかけたものと同等のものが必要なのだ。そしてそういうチャンスを誰にでも平等に与えられべきだ。

 

 そしてこの映画のラストはフレッドの調香師の才能に気付いたエヴが学校へ送り出すシーンで終わるが、このシーンも素晴らしい。まず旅立つ前にエヴがフレッドに「才能があるのと好き嫌いは別だからいつでも学校をやめていいの」的なありがたいセリフを送るのだが、実はこれも人を育てるうえで忘れてはいけない側面だ。そして花言葉を送るのだ。直接エヴが喋れない照れくさい言葉を代わりに花言葉が代用する素晴らしいシーンだった。こういう花言葉ならぜひ貰いたい。こういう不器用な人間が旅立つ若者に照れくさい言葉を他のもので代用して託す的なシーンって伝統的に男性に割り与えられていた役だった気がするが、この映画は正真正銘「女性映画」だ。