@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『チャーリー』

 

『チャーリー』 (777 Charlie) [2022年インド]


南インド・マイスールで暮らす男ダルマは、職場でも自宅の近所でも偏屈者と言われ、酒とタバコとチャップリンの映画だけを楽しみに生きる孤独な日々を過ごしていた。そんな彼の家に、悪徳ブリーダーの劣悪な環境から逃げ出してきたラブラドール・レトリーバーの子犬が住み着くように。犬嫌いのダルマは何度も追い払おうとするが、いつしか心を通わせ、子犬にチャーリーと名付けて迎え入れる。イタズラ好きのチャーリーに振り回されながらも楽しい毎日を送っていたある日、チャーリーが血管肉腫で余命わずかであることが判明。ダルマは雪が好きなチャーリーに本物の雪景色を見せるため、サイドカーにチャーリーを乗せてヒマラヤを目指す旅に出る。監督はキランラージ・K。出演はラクシット・シェッティ(ダルマ)ほか。

 

 インド映画でもカンナダ語の映画は初めて観たと思う。とにかく全てのシーンが新鮮に見えた。特に犬のチャーリーの気持ちの変化を歌って踊るミュージカルシーンではなく、"BGM的な歌で説明してしまおう"というのはさすがだなと。既存の曲なのか、それともこの映画のためのオリジナル曲なのか分からないんだけど、歌が英語だったり、トラディショナルなモノからアコースティック調なモノからカントリー調なモノまである。特にダルマとチャーリーがパラグライダーをしている時に流れる曲は(犬とパラグライダーって大丈夫かいな)、Imagine Dragonsみたいなロックでアメリカのチャートに入っていても違和感ない。曲が良いので上映時間の3時間が全く飽きない(と言っても、やはり3時間近くの上映時間は長いなと...)

 

 チャーリーは本当に愛しくて、ダルマみたいな気難しい人でもそうじゃない人でも、みんなチャーリーを好きになると思う。チャーリーとダルマの交流も良かったし、ここを本当に時間にかけて描いていた。ただ話を盛りすぎたせいで、疑問に思うところも沢山あった。まずダルマがチャーリーとひょんなことから競技会に出て素晴らしい演技を見せて観客から大歓声を浴びるのだけど、「ダルマはそんな安っぽい声援が欲しかった人だったのか?」と思った。映画の核的にはどんな犬でも愛されるべきだというメッセージがあるのに、あの競技会でのシーンがあると、「結局犬は芸が無いとダメなのか?」ということになって、映画として見せているものと、製作者のメッセージとの間に乖離が生じている。次にチャーリーが妊娠していたという事実。病気が分かった時点で、妊娠というリスクをさすがにダルマが避けるべきだったと思うし(まあそれ以外にも犬を飼うことについて色々言いたいことはあるが)、どんどん後半に向けてのダルマのチャーリーに本物の雪を見せたいという欲が、かなり一方的な人間のエゴに見えてくる。あまりここでダルマという不完全な人間のアラを指摘したくないけど、ドラマを盛りすぎたせいでさすがにその不完全性を指摘したくなってくる(特に後半の行動なんて褒められたものじゃない)。また子犬を生んで死ぬというラストも、この感動がやりたいからチャーリーを雌犬にしたのかと邪推したし、今どき子犬を生んで死ぬっていうのはどうなんだろうか。

 

 何だか文句ばっかりなってしまったが、本作の核は最後のメッセージにある。あの製作者のあふれ出てしまうメッセージは、今年の3月に観た『ストリートダンサー』を思い出した。二つとも根底にあるエネルギーは同じものだろう。映画の好みは別として、そういうの私は好きだな。あとラストに『天空の城ラピュタ』の「君をのせて」のオルゴールバージョンが流れるのだが、あの意味は何だろうか?。監督が好きなのかな、まあ確かに本作は「君をのせる」物語だ。それ以外にも『E.T.』やチャップリン関連作品など、まんまオマージュしていたので、好き映画に対してすごく純粋というか、それゆえラストの直球のメッセージに繋がるのだろう。