@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』

 

『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』 (One Life) [2023年イギリス]

 

第2次世界大戦直前の1938年。ナチスから逃れてきた多くのユダヤ人難民がプラハで悲惨な生活を強いられていることを知ったニコラス・ウィントンは、子どもたちをイギリスに避難させる活動を組織し、同志たちとともに里親探しや資金集めに奔走する。ナチスの侵攻が迫るなか、子どもたちを次々と列車に乗せていくが、ついに開戦の日が訪れてしまう。それから49年後、救出できなかった子どもたちのことが忘れられず自責の念にかられ続けていたニコラスのもとに、BBCの番組「ザッツ・ライフ!」の収録への参加依頼が届く。そこで彼を待っていたのは、胸を締め付けるような再会と、思いもよらない未来だった。監督はジェームズ・ホーズ。出演はアンソニー・ホプキンス(ニコラス)、ジョニー・フリン(若い時のニコラス)、ヘレナ・ボナム・カーター(バベット)、アレックス・シャープ(トレヴァー)、ジョナサン・プライス(マーティン)ほか。

 

 イギリスが製作した歴史モノらしく、美術や衣装などのこだわりも感じられる。特に細かいがスクラップブックの細かいところまでの再現性が映画を観ただけでも伝わってくる。全体的に演出も巧みで、難民である子供たちにとって紙の種類はとても重要なモノであるが、それがしっかり伝わる演出だった。特にプラハナチスが侵攻してきたさいに、難民の子供たちの存在を隠すために、みんなで一斉に勢いよく種類を窓から投げて燃やすシーンなんてハッとさせられる。

 

 同日公開の『フィリップ』同様に駅が大きなモチーフとして機能している映画であった。『フィリップ』での駅はここではないどこかへ行ってしまいたいという少し残酷で暗い意味を持っていたとに対して、本作での駅は新しい家、安心して生きていける場所へ行けるというポジティブな意味で使われている。ただポジティブと書いたが、映画自体が扱っているテーマは辛い話だ。本作ではユダヤ難民の子供たちを救おうとし、実際に多くの子供たちを救うも、救わなかった子供たちもいるという救世主モノらしい悩みを扱った作品であるが、『フィリップ』はいわばそのアンサーみたいな、侵略地に取り残された人々の作品だったなと改めて感じた。そしてその残虐性がフィリップによる無差別殺人という形で表れてもいた。『フィリップ』初見時はあまり好きじゃないなと思っていたが、本作と比べるとむしろ『フィリップ』の特異性とリアルさは評価したいし、何なら本作より多くの人に見て欲しいと思った(別に本作がつまらないという訳ではないです。)。

 

 途中でニコラスの旧友役でジョナサン・プライス演じるマーティンとニコラスの食事シーンがある(Two Pope!!)。何てことないシーンであるが、普段はとても高齢者のような生き方をしているニコラスが急に饒舌になって話す。あれは凄くリアルというか、高齢者だからゆっくりしているのではなく、高齢者が我々に合わせてくれているから(理解しやすく、交流しやすい)、色んな所作がゆっくりと見えてしまうんだろうなと改めて感じた。高齢者というのは我々が思っている以上に、ほとんど我々と変わらないし、認知もほとんど変わらない。そして当たり前ではあるが子供ではない。ラストシーンにある、命を救われたかつての子供たちが"生き残り"そして"大人"になって再会することに、とても意味がある演出になっていた。なんてことないシーンだけど、それを何か特別だと思わせるまでのアンソニー・ホプキンスの演技の説得力は凄いのだ。