@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『チャレンジャーズ』

 

『チャレンジャーズ』 (Challengers) [2024年アメリカ]


テニス選手のタシ・ダンカンは確かな実力と華やかな容姿でトッププレイヤーとして活躍していたが、試合中の怪我により選手生命を絶たれてしまう。選手としての未来を突然失ってしまったタシは、自分に好意を寄せる親友同士の若き男子テニス選手、パトリックとアートを同時に愛することに新たな生きがいを見いだしていく。そして、その“愛”は、彼女にとって新たな“ゲーム”の始まりだった。監督はルカ・グァダニーノ。脚本はジャスティン・クリツケス。出演はゼンデイヤ(タシ・ダンカン)、ジョシュ・オコナー(パトリック)、マイク・ファイスト(アート)ほか。

 

 本作の脚本を担当したジャスティン・クリツケスはなんと『パスト ライブス/再会』の監督であるセリーヌ・ソンとリアルで夫婦ということで、もうそれが全てを説明しているというか、こんなことありなの?かって感じだ。公開年も合わせてきているのか?、映画を趣味にして数年経つと面白いこともあるもんだ。タシという全てを手に入れている女性を中心に三角関係から派生するパトリックとアートのクィアな関係を上手にかつユーモラスに表現していた。映像も現代劇なのにすごくゴージャスで汗とか熱い感じが伝わってくる。テニスのシーンもボール目線とかコート目線の撮影が斬新で凄く面白いと思った。

 

 ゼンデイヤ演じるタシがとにかくゴージャスな女性で(それを分かっているなのかタシが出てくるとクラブみたいなスコアがかかって「この女性はイケイケですよ」と分かりやすいくらいのレベルで提示される)、それをアートとパトリックというか男性が取り合うんだけど(二人ともえらくハンサムだ)、恋敵のあまりナイフを突きつけてその人を支配し愛してしまったという、同性愛的欲望を実直に描いている作品だともいえる。この辺は『太陽がいっぱい』を思い出すのだけど、イタリア出身のルカ・グァダニーノ版『太陽はいっぱい』と言うべきだろうか。また、その欲望が食欲にも表れていて、やたらと本作では食事するシーンとかがあるんだけど、あれは「私は飢えています」「満たされない欲望を代わりに食欲で満たします」という充足される欲望とされない欲望の表現なんだろう。

 

 それでは肝心のタシは何者なのか。おそらくタシは冒頭から「私はHomewreckerはしない」と宣言するようにアートとパトリックのクィアな関係を知っていて、それを自ら身体を張って成就させるプロデューサーかつ監督的な立場だろう(彼女がコーチに転向したのは、もちろんそれの比喩だ)。力を持った女性がBL的な男性を弄ぶ話にも見えるが、どちらかと言うとタシは限りなく我々観客の立場に近い。あの冒頭の三人でキスするときのどや顔、ラストのガッツポーズなどのタシの感情を見れば分かるが、あれは映画とかドラマとかをブロマンス的に楽しんでいた人間が「やはりこの登場人物の男性たちは好きだったのか」と判明するときに興奮してしまうあの感情に近い。そのためタシのラストのガッツポーズを見て、私は凄く監督に自分の心が見透かされたような気持ちになって、とても恥ずかしい気分になった。そういう意味で新しい体験をさせてくれるとてもクィアな映画だと思う。