@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『スリープ』

 

『スリープ』 (Sleep) [2023年韓国]

 

ヒョンスと妻スジンは我が子の誕生を控え、幸せな結婚生活を送っていた。ある夜、スジンの隣で眠っていたヒョンスが突然起き上がり「誰か入ってきた」とつぶやくと、それに呼応するかのように家の中に不穏な気配が漂いはじめる。翌朝、下階の住人から、明け方の騒音が1週間続いていると苦情が入るが、ヒョンスもスジンも身に覚えがない。その夜からヒョンスは眠りにつくたびに異常行動を繰り返すようになり、頬をかきむしったり、生魚を丸のみにしたり、窓から身を乗り出したりと次第にエスカレートしていく。夫婦は睡眠クリニックの受診を決めるが、スジンの母は超自然的な力に頼るべきだと話し、巫女から手に入れたお札を夫婦に渡す。監督はユ・ジェソン。出演はチョン・ユミ(スジン)、イ・ソンギュン(ヒョンス)ほか。

 

 スジンもヒョンスも良い人たちなので(あれが"騒音"なら世の中は騒音だらけだ)、そんな良い人たちが巻き込まれる不条理ホラーだ。しかも欧米のホラーと違って、韓国の都市生活ゆえの避けることのない騒音トラブルと隣人トラブル、そして一方的な恨みつらみによる怨霊など、まあとにかく同じような生活を営んでいる私にとって、とても他人事とは思えない話だった。韓国と日本は共通点がたくさんあるが、それをまじまじと思い出させてくれた。

 

 怨霊が人間にのり移って悪さをするという、かなりストレートにホラーを扱った作品なので非常に分かりやすいが、これと言ったヒネリが無いため"普通"と言わざるを得ない作品でもある。同じテーマがある『哭声/コクソン』を思い出すが、改めて『哭声/コクソン』は本当によく出来た映画だったなと思い知らされた。ただ本作にも出てくる霊媒師もクセが強そうな人で、彼女が出てくるシーンだけでも一見の価値があるくらい、霊媒師のシーンだけトーンが全然違うのが面白かった。

 

 途中の睡眠障害とその対応を扱ったシーンは非常によく出来ていると思ったし、あれにも表れているが、本作は夫婦の絆を肯定的にかつ希望を持って作っている、ただそれのせいで酷い目に遭う犬とあの祟り爺さんの娘さんは気の毒だ。その娘さんから見ても、自分は不条理に巻き込まれるホラーでもあるので、もうちょっと祟り爺さんと娘さんがどういう関係だったのかを掘り下げても良かったかな。あの祟り爺さんが一方的に女性であるスジンを祟っているので、生きていようが死んでいようが女性は男性から嫌な目に遭うなんて話なんて、これは女性にとっては本当に怖いことだと思う(この事実だけで十分ホラーだ)。

 

 全体的には楽しめたし、何より上映時間が90分前後でありがたい。あと本作では今のところ日本で公開されているイ・ソンギュン出演作品は最後だそうで(韓国だとまだ他にもあるみたいですが、それが日本で公開されるかは未定)、改めて惜しい人が亡くなってしまったなと思う。ご冥福をお祈りします。