@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『瞳をとじて』

 

瞳をとじて』 (Cerrar los ojos) [2023年スペイン]


映画監督ミゲルがメガホンをとる映画「別れのまなざし」の撮影中に、主演俳優フリオ・アレナスが突然の失踪を遂げた。それから22年が過ぎたある日、ミゲルのもとに、かつての人気俳優失踪事件の謎を追うテレビ番組から出演依頼が舞い込む。取材への協力を決めたミゲルは、親友でもあったフリオと過ごした青春時代や自らの半生を追想していく。そして番組終了後、フリオに似た男が海辺の施設にいるとの情報が寄せられ……。監督はビクトル・エリセ。出演はマノロ・ソロ(ミゲル)、ホセ・コロナド(フリオ)、アナ・トレント(アナ)ほか。

 

 ビクトル・エリセ監督は御年83歳であるが、生涯で本作を入れて長編映画は4作しか製作していない。非常に寡作な監督である。しかも本作が30年以上ぶりの新作である。そう思うと1つのシーンごとが貴重に思えてきたし、何なら2時間50分という長時間も全く嫌味じゃない(ただ私は本作鑑賞時に非常に空腹であり、お腹が鳴って周りに迷惑をかけないように一人格闘していたため、やはり3時間近くの上映時間は素直に長く思えた...)。

 

 静かな演出で進んでいくけど、アナが出てきたときなど必要以上に表情をクローズアップで撮ったり、時々暗転して1つのシーンが終わり次のシーンヘ進むみたいな演出で映画の枠組みを超えてきて「今私が見せられているのは本作の中で上映されている映画のワンシーンじゃないか」と疑いたくなる境界を曖昧にさせる演出など飽きさせない。恥ずかしながらビクトル・エリセの作品は初めて観たので、それが監督の作家性なのか特徴なのか分からず。ビクトル・エリセの過去作をチェックしたいと思った。

 

 撮影や演出は良いと思ったが、肝心の話がどうも個人的には好きじゃなかった。そもそも記憶を無くした(?)と思われているフリオに対してガンガン過去を暴いていくというミゲルの行動が利己的に見えるし、いくらフリオは記憶障害を抱えていても、高齢者施設の職員があんなにフリオのことをベラベラ喋るかな?それに個人情報を警察でもないミゲルに明かしすぎじゃないかとすら思った(これは私の職業上どうしてもツッコみたかった)。そのミゲルの利己的な行動はアナに対してもそうで、5歳の時以来会ってない父親フリオに無理矢理会ってもらおうみたいな行動っておかしくないかな。アナの役どころもけっこう都合が良い感じ。ただミゲルが撮ったあの映画の内容でも顕著だけど、本作では作家の一方的で利己的な行いがテーマなのかもしれない。