@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ドミノ』

 

『ドミノ』 (Hypnotic) [2023年アメリカ]

 

公園で一瞬目を離した隙に娘が行方不明になってしまった刑事ロークは、そのことで強迫観念にかられ、カウンセリングを受けるようになるが、正気を保つために現場の職務に復帰する。そんなある時、銀行強盗を予告するタレコミがあり、現場に向かったロークは、そこに現れた男が娘の行方の鍵を握っていると確信する。しかし男はいとも簡単に周囲の人びとを操ることができ、ロークは男を捕まえることができない。打つ手がないロークは、占いや催眠術を熟知し、世界の秘密を知る占い師のダイアナに協力を求める。ダイアナによれば、ロークの追う男は相手の相手の脳をハッキングしていると言う。彼女の話す“絶対に捕まらない男”の秘密に混乱するロークだったが……。監督はロバート・ロドリゲス。出演はベン・アフレックス(ダニー)、ウィリアム・フィクトナーアリシー・ブラガ(ダイアナ)ほか。

 

 『アリータ バトル・エンジェル』同様にとりあえず続編作るのを前提で「とりま作る」姿勢は潔いし(たぶん続篇は無いな...)、「最近の大作?やたら上映時間なげーよ、短くしてできるだけ一日に多く公開させてやる」的な上映時間の短さも勢いも良いし、ただこの映画で褒められるのはそこだけだろう。あと誇大な宣伝も一周回って懐かしさすらある。

 

 主人公のダニーが行く先々にご丁寧に敵が現れるという親切設定はさながら『ダークナイト』のジョーカーみたいだが、やたら話が暗いのにビジュアルが空間が捻じ曲がっているような感じがすごく『インセプション』みたいで、私がクリストファー・ノーランだったら赤面するレベルだが、こんな無茶苦茶な話を一流の映画にしてしまうあたりにクリストファー・ノーランの手腕があると思うし、狙ったのか偶然なのか分からないが、ロバート・ロドリゲスが「クリストファー・ノーラン監督映画の話の基本って、こんな感じだよ、みんな!」と言っているみたいですごく面白かった(こんな歪んだ見方をしてるのはこの映画の中の視覚効果だけ十分なのに)。

 

 冒頭からダニーが自分が置かれた世界の違和感に気付くまでは『トゥルーマン・ショー』と類似できる。というか『インセプション』よりこっちのほうが似てる作品として指摘されるべきかも。ダニーが娘の居場所を吐かせるために同じシナリオを繰り返す一連のクダリはメタ的で面白いというかこれはきっと映画についての映画なんだろうね。あのセットとか映画そのものだし。ただダニーに見せるつまらないシナリオを書いているのが悪役なんだけど、この悪役ってもしかしてロバート・ロドリゲス本人のことなのかと邪推してしまったけど、一応「このシナリオはつまらない」というメタ的な意識はあるようですごく安心した。

 

 またこの映画はすごく悪の組織が水面下で人を支配しようとしているみたいな陰謀論みたいな話でもある。その陰謀論と主人公ダニーのイノセンスさを対比させている。そのイノセンスを表現するのが典型的なみんな望むアメリカの白人男性であるように見えるベン・アフレックスが演じているのがポイントだ。実はデヴィッド・フィンチャー監督の『ゴーン・ガール』とキャスティングした狙いは同じだと思う。ただし、キャスティングした理由は全然違う。『ゴーン・ガール』ではベン・アフレックスのイノセンスと毒っ気が妻を失踪に追いやったと明確に提示されているのに対し、本作『ドミノ』はその父親のイノセンスさが娘を犯罪から、賢さから、世界や社会の悪から守りたい、そのために家に閉じ込めていたいと振る舞うヒーローとして描かれていた。この点だけ見れば非常に危ない価値観を提示しているのが本作だ。

 

 私は演技に関して全くの素人なので何が上手い演技なのか詳しくは分からないが、おそらくこの映画の主人公演じるベン・アフレックスは表情で全く演技しない無表情の人なので(それがSNS上で逐一話題になるくらいだ)、この手の暗い過去を背負う主人公みたいな役は合ってないんだろうなと思う反面、最近の映画はセリフとか表情で色々説明しすぎている傾向もあるので、かえってベン・アフレックスみたいな無表情演技する役者が悪目立ちするんだろうな。昔のハリウッド映画はみんなけっこう無表情だけど色んな感情を表現していたので。