『マルセル 靴をはいた小さな貝』 (Marcel the Shell with Shoes On) [2021年アメリカ]
アマチュア映画作家のディーンは、靴をはいた、体長およそ2.5センチのおしゃべりな貝のマルセルと出会う。ディーンは彼が語る人生に感銘を受け、マルセルを追ったドキュメンタリーをYouTubeにアップするのだが……。監督はディーン・フライシャー・キャンプ。
実写とストップモーションアニメーションを上手に融合した面白い作品だった。そもそも監督が短編をYou Tubeにアップした動画がきっかけでこの長編に繋がったそうだが、まさしくこの映画の内容そのもので、それをそのまま映画にしてしまったという面白い案だ。映画そのものはディーンがマルセルに密着するみたいな進行で、モキュメンタリーだ。マルセルたちは言わば借りぐらしをして生計をたててるみたいで、それはさながら『借りぐらしのアリエッティ』みたいだ。もしかしたらこの世界のどこかで出会っているかもしれない。それを思うと小さな世界だがとても大きなロマンチックな話だと思う。
マルセルは可愛しい存在で機知に富んだ発言やら文化からの引用をするので、それに感化される人間たちみたいな映画だ。このマルセルのイノセンスとSNSを始めとする人間社会の欲望とエゴを対比させることで観客の心を惹きつけるのだが、これ自体はすごくよく出来ていると思う。また途中でマルセルが仲間探しをするあたりとかはさながら『search/サーチ』を観ているような気分だった。というか映画自体がカメラを回しているディーンの視点で展開するので、ずっと画面を見ているような気分である。
私個人は面白いと思ったのだが、マルセルのイノセンスを強調しすぎている気もするので、このへんは少し嫌だなと思った。