@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ヒトラーのための虐殺会議』

 

ヒトラーのための虐殺会議』

 

第2次世界大戦時、ナチス政権が1100万人のユダヤ人絶滅政策を決定した「バンゼー会議」の全貌を、アドルフ・アイヒマンが記録した議事録に基づいて映画化。1942年1月20日正午、ベルリンのバンゼー湖畔に建つ大邸宅にナチス親衛隊と各事務次官が集められ、「ユダヤ人問題の最終的解決」を議題とする会議が開かれた。「最終的解決」はヨーロッパにいるユダヤ人を計画的に抹殺することを意味する。国家保安部代表ラインハルト・ハイドリヒを議長とする高官15名と秘書1名により、移送、強制収容、強制労働、計画的殺害などの方策が異論すら出ることなく淡々と議決され、1100万人ものユダヤ人の運命がたったの90分で決定づけられた。出席者たちがユダヤ人問題と大量虐殺についてまるでビジネスのように話し合う異様な光景を、ありのままに描き出す。監督はマッティ・ゲショネック。

 

 正直登場人物はハインリヒとアイヒマンしか知らなかったのだが、この名前すら覚えられない役人と軍人がとんでもない内容の会議を行うことで、かえって残虐性が強調される演出を狙っているのかもしれない。(ただこれは私が無知なだけで、ドイツ国内ではこの会議に出席している人間の名前は知られているのかもしれない)

 

 会議は基本的に役人vs.軍人みたいな構図で、軍人の無謀な計画に役人が冷静な指摘をする(認めたくないが役人がまともに見えるくらいだ)という感じで互いに意見が分かれたりするのだが、結局は"どうやってユダヤ人を撲滅するのか"に終始しているので大変背筋が凍る話だ。しかも会議で唯一人道的な意見が「ドイツ兵がユダヤ人を殺すときに精神的な負担がないのか」という意見だけで、それも結局はガスで殺すから大丈夫だみたいなオチだ。(こうやって殺しは分業化され効率化されるんだ)

 

 映画は1時間50分ほとんど会議のシーンのみである。(ちなみに実際のヴァンセー会議も90分ほどで終わったらしい) 限りなく"静"だが、"動"のための映画でもある。舞台を見ているような気分になるが、実際は登場人物の表情からも読み取れる情報が多いので、ここは映画ならではだと思う。またカメラが細かく切り替わりシーンの展開が頻繁に起こるので躍動感がある感じで全く退屈しない。(撮影と編集の努力)

 

 本作以外での話だが...実は本作は日本公開時に日本盤ポスターにハーケンクロイツを印字したポスターを使用していたことにSNS上で多くの指摘があがりポスターからハーケンクロイツを削除したのだが、それ自体はたいへん意味のある行為だと思うし、それを実践した配給会社の倫理観に感謝したい。だからこそ言うのだが、その勢いで邦題からヒトラーの文字を消してもいいのではないかと思った。これはナチスを描いた映画の邦題全般に指摘できることなのだが、あまりにも『ヒトラーの....』という邦題が多すぎる気がする。これだと彼の名前にカリスマ性を与えてしまうし、現に彼のカリスマ性に宣伝が頼り切ってしまっている。できれば避けて欲しいものだ。(それに同じような邦題ばかりで一作一作が全く記憶に残らない)