@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ファイブ・デビルズ』

『ファイブ・デビルズ』

香りの能力を持つ少女が母の封じられた記憶に飛び込んでいく姿を、恐ろしくも美しい映像で描き出す。嗅覚に不思議な能力を持つ少女ヴィッキーは、大好きな母ジョアンヌの香りをこっそり集めている。ある日、謎めいた叔母ジュリアが現れたことをきっかけに、ヴィッキーのさらなる能力が開花。ヴィッキーは自分が生まれる前の母と叔母の過去にタイムリープしてしまう。

 

 監督はレア・ミシウス(女性監督)で今年公開された『パリ13区』でセリーヌ・シマラと共に共同脚本を手掛けていた。

 

初めの車が山々を走るシーンは『シャイニング』へのオマージュで。35mmカメラでの撮影は『ツインピークス』へのオマージュで。香りがテーマなのは『アズ』のオマージュだ。レア監督はいつもアメリカ文化からインスパイアされているらしい。

 

 香りでタイムスリップする。香りはその人の人となりが見えてくるし、確かに時間を感じる題材だ。映画の舞台もフランスの山間部の狭い村で、表では感じが良いがちょっとしたきっかけでその人にある同性愛嫌悪や排外主義的な気持ちが露になる。これは我々が不快な臭いを感じたときの反応に似ている。

 

 ヴィッキーとジュリアはおそらく遺伝で能力を有しているようで、良くも悪くもその能力と付き合って生きていかなければならず、この魔女の要素がありながらも生きていくというのはここ数年の女性が主人公のホラーでよく描かれている要素だ。

 

 ホラーとクィアはよく題材にあがるが、本作のヴィッキーはクィアの関係である母ジョアンヌと叔母ジュリアの関係を邪魔しようとする。ヴィッキーはタイムスリップするが「何も変えない人」なのだが、逆に現代で変えようとする。そこでラストには自殺しようとしたジュリアを助ける。少しいい気持にはならないが、ラストには希望がある。

 

 母と娘、クィアとタイムトラベルがテーマの映画だと、どうしても今年公開された同じくフランスの女性監督セリーヌ・シマラの『秘密の森の、その向こう』に似ているが、ぜひお互いの作品の感想を聞いてみたい。