やっぱり料理は自分のために作るもんだ...
『エイブのキッチンストーリー』(Abe)
ブルックリン在住のエイブは、イスラエル系の母とパレスチナ系の父を持つ。文化や宗教の違いから家族の問題に悩まされる日々の中自分で料理を作りSNSに投稿するのが生きがいであった。そんなある夏、コンフュージョン料理を作るブラジル人シェフのチコのもとで修行することになる...
まずブルックリン在住でイスラエル系の母とパレスチナ系の父を持つ12歳ということでめちゃくちゃ現代っ子なエイブ君である。イスラエル系の家族からはアブラハム、パレスチナ系の家族からはイブラハムと呼ばれるが本人はエイブであることに誇りを持っており、最終的には「ただのエイブだ」と言っており、これは現代の複雑な背景を持つ子どもたちの多くがこういうアイデンティティの形成をしているのではないかと推測する。家族や宗教や文化はその子どもの一部分を担うものであってすべてではないと、その子供自身の人生を真剣に向き合うように周りが変化するという物語の結末でとても良かった。
またエイブくんの心のよりどころが料理であるが、作る対象が家族しかいないのであるが、チコと出会い初めて家族以外のために料理を作ることになり、エイブくん自身がそこに料理の新たな側面を見出すことで、自信のアイデンティティ形成に一役買うことができている。やはり料理のというものは家族のために作るとうまくいかないものである。この物語の終着が『リトル・フォレスト 春夏秋冬』と同じであり、個人的に面白かった。やっぱ料理は自分のために作ろう...