『声優夫婦の甘くない生活』(The Golden Voice)
1990年にソ連からイスラエルへ移住した元声優夫婦が第2の人生を歩もうにも仕事が上手くいかず夫婦の関係に亀裂が入るというあらすじ。
まず面白いのがこの二人の関係である。夫のヴィクトルは未だに声優の仕事に未練があり、それ以外の仕事に身が入らず、また妻のラヤの才能をあまり評価していないし、ラヤが何を思っているのか全くきにしない様子で、かつ大事なことは黙っているという悪い男らしさを内面化したような奴だ。おそらくイスラエル移住もヴィクトルが一方的に決めたんじゃないかと思うくらいだ。そのくせにラヤを被写体にして写真撮影が趣味らしいが、ラヤ本人はあまり写真撮られるのが好きじゃなさそうである。特に冒頭の周りの人の目をきにせず、ヴィクトルがラヤの写真を撮ろうとする飛行機のシーンなんて面白いし、あういう夫婦って至る所にいるよね、夫の趣味に癖癖しながらなんとなく付き合わないといけない妻みたいな夫婦(笑)こんな歯車の合わない夫婦が、ラヤのテレフォン・セックスの仕事が上手くいく結果を通して変化していくさまなんて、痛烈だ。
それにしても移民専用のレンタル・ビデオ店ってこういう時代にはかなり需要があったんだろうなと思う。