犯罪を犯すには優しすぎる...
『ストックホルム・ケース』(Stockholm)
悪党のラースはアメリカに逃れる資金を得るため、ストックホルムの銀行に押し入り、ブリジッタを含む3人を人質に取り、刑務所に収監されている仲間のクラークの釈放と金と逃走用の車を要求する。
だが、警察が彼らを銀行の中に封じ込める作戦に出たことで、事態は長期化の様相を見せる。そんな中、ブリジッタたちはラースとクラークに連帯感や好意的な感情を抱くようになっていく。
かの有名なストックホルム症候群の語源になった事件である。全体的に地味な映画で、銀行の中以外のシーンがないが、役者はみんな大変良い仕事をしている。しかし脚本はもう少し登場人物に感情移入できるような脚色があってもいいくらい、ぬるい感じがする。特にブリジッタのラースに対しての感情移入する描写はもう少し必要だ。またクラークも結局彼はなにがやりたいのかよくわからなかった。というのもそもそもストックホルム症候群は特殊な状況をお互いで経験し、困難を乗り超えることで生じる仲間意識や同情から派生する気持ちなわけだから、もう少しそれこそ観客をストックホルム症候群に陥れるような劇的な脚色をいれてもいいのではないかと思う。
それにしてもラースはこっちが同情してしまうくらい良い人である。なんだかんだ女性をリスペクトする姿勢は忘れないし、基本的に流血とかしたくないと思っている人だ。ボブ・ディランを愛聴しているし、強盗して金持ちになりたいというよりカッコつけたい気持ちの方が強いし。アウトローになるより、普通に優しく生きていけるんじゃないのかな。(この気持ちを抱くのもストックホルム症候群の一種)