『COUNT IN ME』 (Count In Me) [2021年イギリス]
ロック界を代表するドラマーたちにスポットをあてたドキュメンタリー。クライマックスへ向けた特別なセッションへの道のりを軸に、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミス、クイーンのロジャー・テイラー、アイアン・メイデンのニコ・マクブレイン、ポリスのスチュワート・コープランド、ロイヤル・ブラッドのベン・サッチャー、ザ・ダークネスのエミリー・ドーラン・デイビスなど、ドラマーたちがドラムの歴史や自身のキャリア、音楽やドラムそのものについて語り尽くす。監督はマーク・ロー。
上記のあらすじに書いてある通りの音楽ドキュメンタリーである。各ドラマーがドラムをやるキッカケや影響を受けたドラマーを各々紹介していく合間に、ロック史の中でのドラムの役割や歴史的なドラマーを紹介していく構成である。ラストはドラムセッションなどもあり、観ていてとても楽しく、また勉強できる大変良い音楽ドキュメンタリーである。女性のドラマーを紹介して、また音楽業界にある性差別に言及していて、そこも良いと思う。また生前のフー・ファイターズのテイラー・ホーキンスも出ている。
ただ音楽の紹介が90年代前半で終わっており、またどうしても白人中心の音楽史になっているのは否めない。ドラムマシーンもけっこうネガティブに紹介されており、それだとヒップホップ軽視みたいに見えるのもどうしたものかと思った。そもそもドラムマシーンなどは経済的に余裕がない人とか、音楽の知識やリソースが少ない人にとってはとても便利なものだと思う。そもそもこのドキュメンタリーに出てくるドラマーは親にドラムを買ってもらってドラムを始めた人が多く、それだとかなり親の社会的資本や経済資本に依存してしまうし、だからこそドラムマシーンをネガティブに紹介するのは、下手したら貧乏人は音楽するなというメッセージを与えてしまう可能性がある。
それでもみんなが影響を受けたドラマーの話は面白いし、その映像も見えるのはとてもお得だと思う。特にThe Whoのキース・モーンの映像はハチャメチャすぎて今見てもだいぶ凄い。