『モーリタニアン 黒塗りの記録』(The Mauritanian)
弁護士のナンシー・ホランダーとテリー・ダンカンは、モーリタニア人青年モハメドゥの弁護を引き受ける。アメリカ同時多発テロに関与した疑いで逮捕された彼は、裁判すら受けられないまま、拷問と虐待が横行するキューバのグアンタナモ米軍基地で地獄の日々を送っていた。真相を明らかにするべく調査に乗り出すナンシーたちだったが、正義を追求していくうちに、恐るべき陰謀によって隠された真実が浮かび上がる。
本作は上映時間が2時間以上あるため前半はかなりゆっくりなテンポで進んでいくため、若干気が緩む。それにグアンタナモの景色のインサートをじっくり写したりシーンが多く、これはいかにモハメドゥは閉ざされた世界に生きているのかを暗示しているのだろう。
またかなり登場人物たちの信仰に関するシーンをひつこく撮ってあり、これは本来敵同士であるモハメドゥとスチュアート中佐がのちに違う宗教であるが神に対する誠実な態度こそ、同じ立場であり、これがのちの裁判へとつながることへ示しているシーンであった。
また実に辛いのが後半に訪れるモハメドゥが違法に拷問されて自白してしまうシーンだ。モハメドゥが受けた拷問を追体験するかのようなシーンが連続で映されるので、非常に観ていて辛いし気が重くなる。本当にこんな拷問が行われてたなんて、大変人権侵害である。前半のゆっくりのテンポはこの拷問シーンを際立たせるためのものなのかと思う。