道徳心が貫ぬかれた作品
『ザ・スイッチ』 (Freaky)
バーニー・ギャリスは凶暴な殺人鬼であり、「ブリスフィールド・ブッチャー」の通り名で恐れられていた。そんなある日、バーニーが女子高校生(ミリー)を襲撃したところ、凶器に秘められていた魔力が突然解放され、2人の中身が入れ替わってしまった。ミリーは自分が50代の男性の肉体、しかも、指名手配中の殺人鬼の肉体と入れ替わったのを知り慌てふためいたが、バーニーの方は「これで警察に追われることなく殺しができる。こいつのクラスメートで死体の山を築いてやる」と大喜びしていた。
しばらくして、ミリーはバーニーから肉体を取り戻すべく友人(ナイラとジョシュ)の協力を取り付けたが、彼女に残された時間は24時間も残されてはいなかった。
最初のスプラッター描写でとんでもないグロイ系のホラーだって思ったら、それ以外は道徳心に貫かれた青春映画であった。まず主人公のミリーの友達がゲイである。しかもそれが作品のストーリーに関係しているのではなく、ただゲイの友人がいるという普遍で描いている。これは監督がオープンリー・ゲイだからだと思う。またゲイ・キスを思わせるシーンがあるが、そこがとても純粋なキスシーンのようでそこを笑いとして落としていない。
そして良く出来ているなと思うのだが、女子高生の体をにのっとって殺人を起こしまくるのに、その殺人シーンを周囲の人に見られておらず、ミリーが自分の体に戻っても生活に支障がないような描写になっている。また女子高生と中年のおっさんが入れ替わることで性差別を自認するのがよい。またおっさんに変わったミリーもおっさんの体の暴力性に最初は魅せられるが、最後は暴力では何も解決しないことを学ぶのも良い。
やはりこういうスプラッター系ホラー作品を作る監督はこういう倫理観や道徳心がしっかりしている人であって欲しいと思う。