愛ってこういうことなんです
テキサス州。メイベリン・メトカーフは同地にある教会のコーラス隊のリーダーを務めていた。メイベリンにはリッキーという息子がいたが、同性愛者であることをカミングアウトされてからというもの、そのまま疎遠になっていた。敬虔なキリスト教徒であり、保守的な価値観で生きてきたメイベリンは息子の告白を受け止められなかったのである。そんなある日、メイベリンの下にリッキーが急逝したとの一報が届いた。メイベリンが葬儀に参列するべくサンフランシスコを訪れたところ、リッキーが経営していたゲイバーを相続する権利があることが判明した。しかも、そのバーの経営状態は火の車だった。
ここで、メイベリンは誰もが予想しなかった行動に出た。経営の経験がなかったにも拘らず、メイベリンはゲイバーの再建に乗り出したのである。
ゲイバーの経営が難しいことや、ゲイバーでも女性には無料でドリンクを振る舞おうとしたり、他のゲイバーと差をつけるために口パクではなくオリジナルソングでバトルしようとしたりとこの映画の製作人はかなり都市部のLGBTQカルチャーに詳しい人だと思う。
面白いのが、リッキーの母である白人のメイベリンは今までロマコメ映画でゲイが担ってきた、主人公の女性を慰める天使みたいな存在という役柄を、メイベリンが担っている点だ。メイベリンはゲイバーで働く人々のために無条件で励ましたり援助したり、ルームメイトの恋人事情や赤ん坊の世話を積極的に行い的確なアドバイスすらする。これって私が思うところの愛である。愛は恋人ではなく、恋う言う人々に向ける者である。そう愛ってこういうことである。