@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ソウルの春』

 

『ソウルの春』 (12.12: The Day) [2023年韓国]

 

1979年10月26日、独裁者と言われた韓国大統領が側近に暗殺され、国中に衝撃が走った。民主化を期待する国民の声が高まるなか、暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官は新たな独裁者の座を狙い、陸軍内の秘密組織「ハナ会」の将校たちを率いて同年12月12日にクーデターを決行する。一方、高潔な軍人として知られる首都警備司令官イ・テシンは、部下の中にハナ会のメンバーが潜む圧倒的不利な状況に置かれながらも、軍人としての信念に基づいてチョン・ドゥグァンの暴走を阻止するべく立ち上がる。監督はキム・ソンス。出演はファン・ジョンミン(チョン・ドゥグァン)、チョン・ウソン(イ・テシン)、イ・ソンミン(チョン・サンホ)ほか。

 

 韓国の民主主義に対する情熱や歴史を知るには、とても大切な映画だ。冒頭から30分は会議と登場人物を紹介するための時間でゆったりと進むが、チョン・ドゥグァンはクーデターを決行してからはハラハラと進み、史実だけにラストはとても辛い展開である。日本人である私が言葉を選ばずに言うと、大変面白い映画である。クーデターが決行してからはたった一夜の出来事なのに、とてもハラハラする物語展開は素晴らしいし、役者もかなり豪華で他の作品では主演をはっているような役者たちが脇役で出演していたりとそれだけ観ても本作がかなり力の入った作品だということが分かる。また本作は韓国国内の2023年興行収入1位だったそうで、こういう政治作品をみんな観に行ったのだと思うと凄いことだなと思う。

 

 ただ個人的にあまり好きではなかった。とうのは本作に登場する人物はほとんど軍人であり、私は軍人しか出てこない映画は基本的に好きではない(それがアメリカ映画でも日本映画でもだ)。ちょっと従軍記者の記録を見ているような映画だ。というのも、従軍記者と言うのは軍人と寝食を共にする中で第3者的な中立的な立場を忘れて、軍人に同情的になってくることがある。そのせいで軍人に同情的で肯定的な気持ちを持って記録を残してしまい、戦争や軍隊が本来持っている暴力性を美化してしまう危険性があるのだが、本作はとにかくその危険性に溢れている映画だ。監督の軍人に対しての肉薄する気持ちは、観ていて気持ち悪くなってくるくらいだ。

 

 また本作は軍人だけでなく、男性しかでてこない映画である(念のため軍側に事務仕事する女性は出てくるがセリフはない)。女性と市民は全く出てこない。一夜の出来事だから仕方ないと思う。韓国の民主主義を描いているというより、やはり軍人の記録を映画化したという側面の方が大きいように思えた(もちろんそれ自体は無意味ではない)。ただ政治を描いているのに市民や女性が全く出てこない点はどうなのかと思った。時々イ・テシンの妻が出てくるのだけど、夫の食事の心配しかしない...。市民の存在を忘れていないよという監督の目くばせのために登場させている感じは否めない。変な話だが、本作に出てくる大統領が一番市民的な良心がある立場にある人であり(絶対暴力は避けたいと思っている)、大統領が浮いた存在で出てくるあたり本作がいかに特異な作品であるかを物語っていると思う。