@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ファースト・カウ』

 

『ファースト・カウ』 (First Cow) [2020年アメリカ]

 

西部開拓時代のオレゴン州アメリカンドリームを求めて未開の地へ移住した料理人クッキーと中国人移民キング・ルーは意気投合し、ある大胆な計画を思いつく。それは、この地に初めてやってきた“富の象徴”である牛からミルクを盗み、ドーナツをつくって一獲千金を狙うというビジネスだった。監督はケリー・ライカート。脚本はケリー・ライカート、ジョナサン・レイモンド。出演はジョン・マガロ(クッキー)、オリオン・リー(キング)、トビー・ジョーンズユエン・ブレムナー、スコット・シェパードほか。

 

 最初のまったりな感じでストーリーが展開していくのかと思いきや、クッキーとキングが盗みで牛乳を得て企業していく辺りからエンジンがかかったように面白くなる。本作はかなり王道のアメリカ映画で、かつオルタナティブな西部劇だと思う。

 

 タフでないと生きていかないであろう開拓史の中で、クッキーとキングはマッチョではないが非常にタフで野心家である。マッチョでもそうでなくても企業するのがアメリカ映画の特徴だ。その過程で盗みを働く2人はさながら西部劇のアウトローでもある。そんな2人に天罰が当たるかのように死を迎えるのだが、これも非常にアメリカン・ニュー・シネマの西部劇の描かれ方だ。そう言えばアメリカン・ニュー・シネマの西部劇は主人公がよく死んでいたな。とてもソフトな人柄な2人にも盗みを働いたことの償いをさせるあたりは非常にモダンな視点だと感じたし、倫理観に貫かれた作品だと思う。

 

 クッキーの優しくて芯のある性格も、牛に話し掛ける、ひっくり返っている虫を気にかけてあげる、初対面だけど裸のキングに何か羽織るものをあげてあげるなど、細かく描写されていて感心した。この人がどんな人なのか、台詞を使わずに直ぐに理解させてくれる映画って意外と少ないんだよね。

 

 クッキーとキングが作るドーナッツもあんまり美味しそうに撮られておらず、それがかえって開拓生活における食生活の厳しさが強調されていて良い。地味な作風だがあらゆるシーンが綺麗で非常に丁寧に作られた作品であった。とても良い作品だった。