@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『リトル・ダンサー デジタルリマスター版』

 

リトル・ダンサー デジタルリマスター版』 (Billy Elliot) [2000イギリス] [2024年デジタルリマスター]

 

1984年、イングランド北東部の炭鉱町。母を亡くした11歳の少年ビリーは、炭鉱労働者の父の命令でボクシング教室に通わされている。ある日、偶然目にしたバレエ教室のレッスンに興味を抱いた彼は、女の子たちに混じってレッスンに参加するように。バレエの先生ウィルキンソンはビリーにダンサーとしての才能を見いだし、彼女の熱心な指導のもとでビリーはめきめきと上達していくが……。監督はスティーブン・ダルドリー。出演はジェイミー・ベル(ビリー)、ジュリー・ウォルターズ(ウィルキンソン)、ゲイリー・ルイス(ジャッキー)、ジェイミー・トレイブン(トニー)、ジーン・ヘイウッド(祖母)ほか。

 

 あの名作が2024年にデジタルリマスターされ日本公開ということで観てきた。映画自体は大学の講義で観て以来なので(観たと言っても教授の解説したいところを中心に観たたという感じ)、しっかり全編観たのは今回が初めてだった。事前に分かってはいたが、本当に良い映画だった。私が観た回のお客さんも同じ思いだったらしく、すすり泣く声があちこちから聞こえてきた(気持ちは分かる)。スティーブン・ダルトリー監督は本作が長編1作目らしいのだが、凄いよ1作目でこれは。その後も『めぐりあう時間たち』『愛を読むひと』『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』『ザ・クラウン』シリーズでしょ、いつも良い作品をありがとうございます(日本語版のWikipediaにはバイセクシャルと書かれているのですが、英語版のWikipediaにはゲイと書かれている。どっちだろうか)。

 

 本作に出てくるバレエは力強く美しい表現と言うよりかは限りなく反逆の精神を体現していて、パンクとかロックにすごく近い。それを鮮やかに彩るようにそれに連なる既存曲のロックとかポップスとかが流れるのだが、やはり特筆すべきはT. Rexだよね。T. Rexが流れたら観ている方は自然とエモーショナルな気持ちになるもんだ。ビリーの鬱屈とした言葉にできない思いが既存の曲に乗っていて、それに呼応するようにビリーは本編の中で踊るシーンはミュージカルのようだが、ミュージカルというアプローチはとれないからこそああいう風な演出をとるんだよね。ミュージカルはビリーにとって祖母と見るテレビの中にある遠い存在だ。本作の舞台版はミュージカルらしいのですが、たぶん映画が好きな私にとってそのミュージカル、観れないな...。

 

 バレエが言葉を使わなくても思いを伝える表現なので、本作でもセリフ以外で伝えるようとする演出が多い。例えば音楽や登場人物の表情や動きなどだ。逆にセリフになったときの爆発した登場人物の思いに心揺さぶられる。特にお父さんがビリーの進学費用のためにトニーを裏切る形で炭鉱に戻るシーンのやり取りは本当に心を揺さぶられるし、かと思えば父親としてビリーと何気なく遊ぶ最後のシーンの温かさにえらく感動する(ずっと親子の絆が断絶しているような印象が冒頭から続いていたからさ、あんな何気ない遊びのシーンが本当に感動するんだよ)。欧米の映画業界は凄く男性中心的で、特に製作者はみんなパパっ子が多い印象だけど、本作を初めとしてみんな本当にお父さんに認めてもらいたい気持ちが強いんだなと改めて思う。

 

 また本作で特徴的なのが良い時には必ず悪いことが起きるという展開作りや常に何かを反比例してみせる表現を採用している。映画批評の入口になっている作品として選ばれるのも納得するくらいだ。例えば上流階級の世界に入っていく労働者階級のビリーとか、ビリーが合格して良いことが起きたと思えば同時にストライキは終わって労働者階級が敗北するとか、ビリーが進学し旅立ちのバスで上京していくシーンと炭鉱で働くためエレベーターで暗い炭鉱へ下がる父と兄とか、女の子はバレエで男の子はボクシングとか、とにかく常に対比構造をとっている。感傷的だけど、ただ"良い"映画にはしない、安易な感動を否定している。そもそも炭鉱で働いていてストライキしていた人は本作を観ると複雑な思いを抱くと思うし、その複雑性は観客も持つべきだろう。