『クレッシェンド 音楽の架け橋』
世界的に名の知られる指揮者のエドゥアルト・スポルクは、紛争中のイスラエルとパレスチナから若者たちを集めてオーケストラを編成し、平和を祈ってコンサートを開くというプロジェクトに参加する。オーケストラには、オーディションを勝ち抜き、家族の反対や軍の検問を乗り越え、音楽家になるチャンスをつかんだ20数人の若者たちが集まったが、彼らもまた、激しくぶつかり合ってしまう。そこでスポルクは、コンサートまでの21日間、彼らを合宿に連れ出す。寝食を共にし、互いの音に耳を傾け、経験を語り合うことで、少しずつ心をひとつにしていくオーケストラの若者たち。しかし、コンサート前日にある事件が起こる。
おそらくこの映画はラストの空港での鏡越しでの演奏シーンを盛り上げるためにできたような映画だ。それにちゃんと感動できるし。音楽映画としてもちゃんとできている。ただし、オマルが死んだシーンは全く納得いかない。あれは必要ないだろう。しかも恋愛が楽団の足を引っ張っているみたいな描かれ方も嫌だ。
実際にある楽団をモデルにしているので、イスラエルとパレスチナの若者を集めてオーケストラを作る映画を作りたいという意図は批判しないよ。でもさやっぱり現実は圧倒的にパレスチナのほうがイスラエルの攻撃にさらされているんだよ。パレスチナのほうが被害は甚大なんだよ。まだ今でもそうなんだよ。この映画はドイツが製作でおそらくイスラエルを悪く言えないんだろうけど、でもさやっぱり現実を反映しているかと言えば、この映画はそこには目をつむっているんだよ。この映画の両論併記みたいな態度は許されるものではないよ。