@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『サンドラの小さな家』

その家が燃えるには訳がある

 

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『サンドラの小さな家』(herself)

 

アイルランドダブリン。暴力を振るう夫(ゲイリー)から逃れるべく、サンドラは子供2人と一緒に家を飛び出した。ひとまず安宿に身を寄せたサンドラだったが、新居を探そうにも、折からの住宅価格の高騰で手頃な物件はなく、公的機関からの支援も十分に受けられないという状況に陥った。そこで、サンドラは新しい友人たちの力を借り、自分の手で一から新居を建設することにした。

しばらくして、予想だにしなかった一報がサンドラの下に飛び込んできた。ゲイリーが「父親である自分には子供たちに会う権利があり、子供たちもそれを望んでいるのにサンドラが妨害している」と裁判所に訴えたのだという。

 

 かなりDVの描写がリアルでフラッシュバック描写も非常にリアルである。また公的支援があてにならないから、自分の力と周りの力を借りて家を建てようとするのも女性やマイノリティが生きていくうえでかなり上等な手段のように思える。そんなサンドラを助けようとする周りの人間の優しさには涙が出るし、最後家が完成し子どもの親権を手に入れた時は良かったと思う。しかしこの映画はそんな安易な気持ちを簡単に打ち砕いてくる。せっかく建てた家が燃えてしまうのだ。この残酷な現実を突き付けてくるあたり、ケン・ローチ監督作品を彷彿としてくる。しかしよくよく考えれば家が燃えるにはちゃんと訳がある。まずサンドラが公的支援が十分受けられず家が手に入らないのはどう考えても政治の失敗である。そこを追及するにはやはり自助と共助だけで建てられた家が燃える必要があるのだ。

 

 またこの映画はあの『マンマ・ミーア』を監督した人が作った作品である。全然『マンマ・ミーア』と違うが、音楽のセンスが非常にマンマ・ミーアっぽくて笑ってしまった。まず映画の冒頭にシーアのChandelierが流れてサンドラと娘たちがそれに合わせて歌うのだが、まずこの曲はポップソングであるが非常に題材は暗いのだ。パーティに呼ばれる都合の良い女として生きることに疲れている女性がテーマのChandelierをサンドラが歌うのは非常に意味深いというか、これから何とか生きていくサンドラの人生を比喩的表現している。またみんなで家を建てている間に流れる曲がこれまたシーアとDavid GuettaのTitaniumである。これはEDMでこういう映画には全くそぐわないサウンドだが、私はチタンでできているから何があっても倒れないという歌詞がとてもサンドラの生き方を表している。