子どもは大人が思っている以上に自分を確立しているものだ...
『秘密への招待状』(After The Wedding)
イザベル・アンダーソン(ミシェル・ウィリアムズ)はインドで孤児院を運営していた。そんなある日、イザベルは大口の寄付を検討しているという経営者、テレサ・ヤング(ジュリアン・ムーア)に会うべくニューヨークへと飛び立った。日々の仕事に忙しいイザベルはニューヨーク行きに乗り気でなかったが、テレサが「直接説明を聞いてから寄付したい」と強く主張したため、やむなくそうせざるを得なくなった。しかも、現地に着いたイザベルは半ば強要される形でテレサの娘、グレイスの結婚式に出席させられる羽目になった。困惑と苛立ちを覚えるイザベルだったが、式場で思わぬ人物と再会することになった。その人物とは元恋人のオスカーであった。オスカーはイザベルと破局した後、テレサと結婚していたのである。イザベルは「嫌がらせのために呼びつけたのか」と問い質したが、テレサはシラを切るばかりであった。実のところ、テレサの真意は別のところにあったのである。
本作は2006年のデンマーク映画『アフター・ウェディング』のリメイクであり、主人公を男性から女性に変えたリメイク作品である。全体的にゆっくりとした映画で正直退屈ではあるが、子育てにおいて親が子供に対しておかしてしまいがちな嘘を描いた作品であると思う。
まずテレサとオスカーは長女のグレイスの産みの母親の存在を隠し、さらにテレサは自身の病気を隠していた。それがグレイスのためだと勝手に思っていたからだ。しかし、これはみんな肌で感じることだが親が子供に真実を伝えずに嘘をつくのは正直よくないことであり、人道的にも人権的にも子供には真実を知る権利があり、たとえそれが残酷な真実でも子どもは受け入れて、成長していくものなのである。しかし親はこれを知らない。テレサとグレイスの母娘関係はまさに
そうなのだが。本作の中ではそんなテレサの病気や母親としての不安を鳥の巣が比喩として登場している。鳥の巣はひな鳥が巣立てば用なしであり、テレサが拾った鳥の巣もおそらくひな鳥が巣立った後の巣だ。それなのにテレサは巣にこだわりがあり、手離せないでいる。しかし映画のラストではグレイスはしっかりとテレサの死と真実をしっかりと受け入れているが、テレサ自身は最後まで死を恐れていた。テレサ自身が巣になってしまったようであった。
そしてイザベル自身も実は子どもの巣立ちを2回経験している。一度目は若すぎて育てることができなかった、実の子であるグレイスの巣立ち。2度目はインドの孤児院で特に目をかけていた少年(鳥が好きだという設定)に養子縁組を申し込むも、本人に拒否される。ここでも巣立ちを経験する。巣立ちというモチーフを上手く使った映画であった。