@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『THE CROSSING~香港と大陸をまたぐ少女~』


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『THE CROSSING~香港と大陸をまたぐ少女~』

 

 

香港出身の父と中国大陸出身の母を持つ16歳の高校生ペイは、毎日深センから香港の高校に通っている。
香港で家庭を持ちながらトラック運転手として働いていた父親ヨンと出稼ぎに出ていた母親ランが出会い、ヨンは愛人としてランと親しくなりペイを授かる。
景気も悪くなると、ランはヨンを香港に残しペイを連れて深センに2人で暮らす。
母は麻雀で生計を立て、父は香港で別の家族を持ちながらトラック運転手をしている。
ランは日々、友人との麻雀で生計を立てている。
家族がバラバラで孤独なペイにとっての心の拠り所は、親友ジョーと過ごす時間。2人は北海道旅行を夢見て、学校で小遣い稼ぎをしていた。ある日家に帰る途中、香港と深センの間でスマートフォンの密輸グループに巻き込まれるが、すぐにお金を稼ぐことができると知るとペイはお金欲しさに親友ジョーの彼氏ハオにお願いして密輸団の仲間に入り、危険な裏の仕事に手を染める。密輸団での仕事をこなしていく内に、ペイは自然とハオと密接な関係になり。ハオは密輸団のリーダーに内緒で、ペイに大きな仕事を持ちかける。ペイとハオが密接な関係にあると気づいたジョーはペイに問い詰める。
その時、ペイはジョーとの友情が試される。

 

 香港と中国大陸深センを通学のために行ったり来たりするうちに密輸に手を出す女子高生を描いた今作。監督は女性監督であるバイ・シュエ(白雪)。まず主人公のペイは婚姻関係にない香港に住む父親と大陸に住む母親のもとに生まれながら、大陸で暮らしながら香港にある高校に通っているという複雑な背景がある。同級生は香港に住みながら、自由にかつ経済的に豊かである。そんなペイが安易に密輸と言う犯罪に手を出し、金を稼いでいく。経済的な格差や片親の不在からくる貧困や孤独が要因で犯罪に手を染めるというアジア映画はタイ映画『バッド・ジーニアス』を彷彿とさせるが、今作は大陸と香港を移動するということでより複雑性を帯びた映画である。

 

 中国からの独立を目指す今の香港事情と合わせてみると主人公のペイはかなり複雑な事情を抱えていることは容易に想像できるが、引き離された文化の下で青春時代を生きるのは難しいし、大陸と香港のどっちに肩入れするのだろうと考えてしまう。私は香港に住んだ方がいいんじゃない?と思うのだが、香港に住むということは父親のもとを選ぶということで、都合の良い時だけ(免罪符的にともいえるが)父親になる、彼の元で暮らすのもどうかと思うし、大陸で母親と貧困の中で暮らすのか、それも複雑である。とても考えさせる映画であると同時に、私は香港の人がこの映画に対してどんな感想を抱くのかを聞いてみたいなと思う。そして最近のアジア青春映画はかなり経済格差問題に切り込んだ、もしくはそのエッセンスがある映画が多い気がするが、それくらいアジアにおいて経済格差が顕著になっているということの裏返しにである。

 

 最後のペイと母親が香港の町を見下ろして「ここが香港だ」というシーンは単純であるが、凄い意味のあるシーンであると思う。こんな複雑な感想を抱く映画を女性の若い監督が高校生を主演に作ったのは凄い画期的なことだと思う。