@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『映画クレヨンしんちゃん爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~』

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ブログを開設した一発目の記事がまさかのクレヨンしんちゃんの映画になるとは思わなかったが、今日観た作品から書いていこうと決意したのでしょうがない。

 

シリーズ26作品目であり監督は高橋渉、脚本はうえのきみこさんが務めている。

 

前作の『宇宙人シリリ』が恐ろしいほどつまらなくて、(いくら『オラの引っ越し物語サボテン大襲撃』で大記録を打ち立てようが)監督・脚本を務めた橋本昌和さんを体育館裏に呼び出して説教するレベルだったのだが、今作『爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~』は前作をはるかに上回る出来だった。さすが高橋監督である。

 

髙橋監督は『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』で一度世間的に離れつつあった劇しんファンたちの心をわしづかみさせ、『爆睡!ユメミーワールド大突撃』では今まで語られてこなかった"母と子""女の子同士の友情"をテーマに据えてクレヨンしんちゃんは男の子、父親だけでなく老若男女のテーマを広げることができると証明させた監督である。

 

今作のプロットは....

<春日部に古くからある中華街・アイヤータウンにやってきたしんのすけ達カスカベ防衛隊は、「伝説のカンフー」と呼ばれる拳法「ぷにぷに拳」の修行に励んでいるマサオから「一緒にやらない?」と誘われる。最初は乗り気では無かったが、カンフー少女のランに惹かれたしんのすけにつられ、他のメンバーも渋々付き合う事に。そんな中、食べたらヤミツキになると言われる謎のラーメン・ブラックパンダラーメンを食べた春日部の人々が次々と凶暴化して暴動を起こし、アイヤータウンを大混乱に陥らせる奇怪な事件が発生。アイヤータウンを守るためにカスカベ防衛隊は謎の組織との戦いに挑む。>(情報源はコチラ

 

まずカンフーがテーマということで春日部にある中華街・アイヤータウン(おそらく在住中国人たちが始めた中華街)にカスカベ防衛隊がやってくるのだが、それじたいが国際交流のようで素晴らしい。またぷにぷに拳をカスカベ防衛隊たちが学ぶのも伝統を引き継ぐのに国籍やルーツは関係ないということを示唆しており、これまた素晴らしい。

 

また今作ではカスカベ防衛隊の無償の友情に焦点が当てられている。カスカベ防衛隊の中で唯一ぷにぷに拳修得が遅れるマサオくんが負い目を感じ一度はカスカベ防衛隊を離れるのだが、それでもカスカベ防衛隊という枠組みをを越えた友情関係は持続しており(そしてそれを明言するシーンがある)最後にはカスカベ防衛隊に帰ってくる。しかもぷにぷに拳ではなく強さより優しさが大事という英知を取得して。そしてその優しさこそ本作のカギである。そうマサオくんは誰よりも人一番優しいのだ。

 

ぷにぷに拳をカスカベ防衛隊と共に学ぶランが修行するシーンはカンフー映画ファンにはたまらない作りになっていると思う。やはり髙橋監督...というかクレヨンしんちゃんのスタッフは海外映画の知識が深いということを改めて確信させてくる。

 

またこのランの描かれ方が素晴らしく、カスカベ防衛隊とともにぷにぷに拳を継承しようと努力する姿が非常によく描かれている。この時点でぷにぷに拳を継承するのは国籍も性別も関係ないことを示す。またランは養子なので血統も関係ないことも示唆される。カスカベ防衛隊を導くのが女性のランというのがまた良い。

 

ランは養子として中華街の人々に大切に育てられている設定で、そこで在住中国人のコミュニティを肯定的に描かれている。日本では中国系の人々へのヘイトが日常的に行われているのが現実の中、多くの子どもが観るであろうクレヨンしんちゃんの映画で在住中国人のコミュニティが肯定的に描かれているのは救いである。もちろん在住中国人がカンフーをやってるというのいうのはステレオタイプになりかねないが。また本作では野原一家とランが中国にぷにぷに拳の謎を探しに行くシーンがある。

 

 またランはその街思いの性格と強さを一心不乱に求める姿とぷにぷに拳を継承したいという一生懸命さが良いのだが、反面それが彼女の欠点である。その証拠にランはぷにぷに拳を力の使い方を間違う。ランはぷにぷに拳の精霊から本来はしんのすけが受け取るはずの(ぷにぷに拳の真意に気付いているから)ぷにぷに拳最終奥義を無理矢理取得する。そのせいでぷにぷに拳の強さを暴走させてしまい、いちおう本作の悪役であるドン・パンパンを倒すのである。しかしそれだけでなく彼女は強さを勘違いしている人、風紀を乱す人々全員をぷにぷに拳で粛清していくようになる。そしてそれが世界平和に繋がると本気で思っている。このシーンはかなりシリアスである。まるで暴力を行使する悪役がランにシフトチェンジしたように見えるからである。強さを求めるあまり本来のぷにぷに拳の意図を見失ってしまっているのである。こんな厚みのある女性キャラクターは映画クレヨンしんちゃんでは珍しい。それはひとえに脚本を担当したうえのきみこさんのおかげだと思う。

 

そんなランに本来の姿に戻ってほしいと願うカスカベ防衛隊は、ぷにぷに拳ではない別のアプローチを試みる。それはみんなでジェンカを踊るというかなり突拍子もないアイデアである。しかし本来の優しさ、みんなで踊れば楽しいんだ、それが世界平和だということをランに思い出して欲しいというカスカベ防衛隊の一生懸命さがランに伝わる。正直あんだけぷにぷに拳とか言っていたのに、最終的にミュージカルみたいな帰結の仕方は無理矢理すぎるだろと思わなくはないが、ジェンカを踊るシーンはとてもかわいい。そして同時に柔軟な心にさせてくれる。それこそぷにぷに拳の精霊が言っていた柔軟さである。また暴力を行使するランに本当の優しさを取り戻して欲しいと行動するカスカベ防衛隊は心から他人を思いやる心、優しさで溢れている。まさに強さとは優しさであるのであろう。そして私も本当の強さは優しさだと思うタイプなのでこの物語の帰結の仕方には大賛成である。

 

映画の内容以外の情報だと、クレヨンしんちゃんの熱烈ファンであり『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』にも出ていた関根勤さんが師匠役で出演している。後半は「パンツ丸見え」としか喋らないが...またひろしのCVは藤原さんではなく森川さんだった。もう戻ってこないのだろうか。

 

また本作は「友情濃いめ」というフレーズと相まって野原家は全く活躍しない。あくまで本作はカスカベ防衛隊がメインだ。そしてやはり私はカスカベ防衛隊がメインの映画の方が好きだなと思った。

 

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