@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』

愛され映画ではあるが、監督本人への告発により全く愛せない作品へとなった 

 

f:id:GB19940919:20180929184715j:plain

 

『ヴァレリアン 千の惑星と救世主』(Valerian and the City of a Thousand Planets)

 

西暦2740年、宇宙の秩序を守るべく銀河をパトロールしている連邦捜査官のヴァレリアンとローレリーヌは、とある任務を遂行すべく"千の惑星の都市"として知られる「アルファ宇宙ステーション」へと向かう。そこは長い年月を経て拡張を続け、あらゆる種族が共存する場所だったが、そこは邪悪な陰謀と秘密が隠されていた

 

なんかスター・ウォーズみたいな壮大な映画を期待していたのだが(しかし映画の原作はスター・ウォーズに影響を与えている)、全く違く肩透かしを食らうが、それがよい具合で作用する。つまりこれは面白い映画だが、駄作だとも捉えられており、つまり愛される映画だ。

 

監督であるリュック・ベッソン念願の映画化作品で、『アバター』の映像化に触発されて本作を作ったそうだが、まあ確かに『アバター』っぽい。しかしビック・バジェット作品だが、興行収入が見事に赤字だったという不運な映画だ。そのエピソードも含めて映画ファンには愛される映画であることは間違いない。

 

キャラクターなどはSFファンはたまらないし、冒険モノとしてもカッコイイし見ごたえもある、主人公である二人も最高にクールでヒット要素満載なのに、全米では見事にヒットせず。なぜなのか。そりゃスター・トレックとかスター・ウォーズと比べるといろいろ抜けてる部分があるよ、でも愛嬌は2作よりもよっぽど『ヴァレリアン』のほうがある。

 

愛嬌たっぷりの映画のなかで特に私個人が気に入った点をいくつかあげてみる。

まず1つ目が冒頭のデビット・ボウイの「Space Oddity」を使いいろんな種族の人々が握手を交わすシーンだ。(この多様性を打ち出したのはあとでやってくるシーンにつながる)監督なりのデビッド・ボウイへのトリビュートだろう。

2つ目は歌手つながりで人間にも変身できる宇宙人のバブル役でリアーナが出演している。しかも冒頭のダンスシーンは必見である。(リアーナはほかの歌手と比べて映画の作品の選び方が秀逸だ)またこのバブルの雇い主役でイーサン・ホークがちょい役で出演しているのが笑える。

3つ目は敵だと思われていた種族たちが実は難民だったという点である。ここだけ非常にシリアスな設定だったし、彼らの故郷を再び創成するという話は、近年のヨーロッパの状況を表しているのではないかと思った。

4つ目は文書主義など官僚制の弊害を描いている点である。しかもヴァレリアンの上司が上昇志向の白人男性というのも面白いし、彼らの後釜に座ったのも白人男性だった。働いている人は多人種なのに。

5つ目はデイン・デハーン演じるヴァレリアンとカーラ・デルヴィーニュ演じるローレリーヌの関係性である。まず演じる二人がすごく特徴的な顔立ちで(ゲイ・アイコンみたいでとても魅力的だ)、さらにヴァレリアンがプレイ・ボーイなのに全くやらしく見えないくらい二人の関係は対等なのだ。どうみても『スター・ウォーズ』のハン・ソロレイア姫のような関係なのにこちらと同様に全く嫌味な感じがしないのだ(他の映画でこういう役観たら真っ先に私は嫌いになるであろう役どころなのに...)。これはひとえにカーラ演じるローレリーヌのおかげだと思う。しかも主題歌まで歌ってるし。(曲のプロデュースはファレル・ウィリアムズ、MV監督はリュック・ベッソンという新人としては豪華すぎる面々だ)やっぱりSFはBadassな女性キャラクターが出てこないとね。しかしそれ以上に魅力なのはヴァレリアンだ。まずあんなに官僚制の組織なのに上昇志向が全くなく、大事な仕事中なのにバカンスとか恋愛のことしか頭にない。しかも来ている服が最高にラフで笑える。ヴァレリアンは全く従来のホモソーシャルな社会に足を向けているのだ(まあバーレスクには興味津々だったけど)

 

最後に、リュック監督のSF趣味全開の作品ではあるが、今まで通りリュック監督の女性趣味も全開だった。まあそういうクールな女性が好きなんでしょうね。しかしこの監督の女性の描写を手放しで受け入れることはできなくなってしまった。なぜなら#Metooムーブメントの中でリュック・ベッソンも過去のレイプを告発されたからだ。しかも最初は実名の女性からだったが、その後にも同じような被害を受けたという女優が出てきたのだ。しかも加害の仕方がかなり悪質で正直映画業界を追放されてもおかしくない。しかも彼の過去の妻たちが全員女優さんだったことを考えるとかなり常習犯っぽい。ということで史上最高の愛されSF映画が、監督の現実での行いのせいで全く受け入れられない作品になってしまった。監督には同情の余地がない。